ID番号 | : | 09335 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本電産トーソク事件 |
争点 | : | 勤務態度不良による解雇の有効性 |
事案概要 | : | (1) 本件は、被告(日本電産トーソク㈱)との間で雇用契約を締結した労働者である原告が、被告から平成29年5月11日に懲戒解雇され、その後予備的に同年7月10日に普通解雇されたところ、上記各解雇が懲戒権の濫用あるいは解雇権の濫用に当たり、労働契約法15条、16条により無効であるなどと主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同懲戒解雇後の賃金等の支払を求め、さらに、同懲戒解雇及び同普通解雇が原告に対する不法行為に当たるとして、同不法行為により被った精神的苦痛に対する慰謝料等の支払を求めた事案である。 (2) 判決は、諭旨解雇及びそれに伴う懲戒解雇は無効、普通解雇は有効と認めた上で、懲戒解雇の日から普通解雇の日の前日までの賃金の支払を認めた。 |
参照法条 | : | 労働契約法15条 労働契約法16条 |
体系項目 | : | 解雇 (民事)/3解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 令和2年2月19日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成30年(ワ)第2057号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例1226号72頁 |
審級関係 | : | 確定 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇 (民事)/3解雇権の濫用〕 (1)被告は、懲戒処分の種類の1つとして諭旨解雇を定めており、諭旨解雇は任意に退職願を提出するよう勧告するものではあるが、同勧告に従わなかった場合は懲戒解雇とするものであるから、懲戒権の濫用に当たるか否かの判断(労働契約法15条)に当たっては、懲戒解雇と同様の規律が及ぶと解するのが相当である。そして、懲戒解雇については、それが労働者の将来にわたり影響を与え得る、重大な不利益を与える峻厳な制裁であることからすれば、その有効性については、対象となる懲戒事由該当行為の動機、態様の悪質性、当該行為が社会に与えた影響、当該使用者の企業秩序を侵害した程度等の諸事情を総合的に勘案して判断すべきものと解される。 (2)原告の一連の行為については、少なくとも、就業規則所定の懲戒事由としての「職務上の指示命令に従わず、職場の秩序を乱すとき」(80条3号)に該当することは明らかであるから、懲戒事由該当性が認められる。 原告には懲戒処分歴はなかったことなど、原告にとって有利に斟酌すべき事情も認められる。このような事情をも勘案すると、1度目の懲戒処分で原告を直ちに諭旨解雇とすることは、やや重きに失するというべきである。 以上のとおり、本件諭旨解雇及びそれに伴う本件懲戒解雇については、懲戒処分としての相当性を欠き、懲戒権の濫用に当たるものであって、労働契約法15条により無効であると認められる。 (3)原告が、入社後配属された複数の部署においてトラブルを起こし、最終的に職場でカッターの刃を持ち出すなどの事件を起こしたことからすれば、被告としては、このように職場秩序を著しく乱した原告をもはや職場に配置しておくことはできないと考えるのはむしろ当然であるといえ、かつ、それまでにも、被告が、トラブルを起こす原告に対し、その都度注意・指導を繰り返し、いくつかの部署に配転して幾度も再起を期させてきたことは、前記認定事実に照らし明らかであって、もはや改善の余地がないと考えるのも無理からぬものということができるから、本件普通解雇は、客観的に合理的な理由があり、かつ、社会通念上も相当であると認められる。 |