ID番号 | : | 09337 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | La Tortuga(過労死)事件 |
争点 | : | 過重労働による損害賠償 |
事案概要 | : | (1) 本件は、被告会社が経営していたレストラン「D」(以下「本件レストラン」という。)で調理師として働いていたEが、本件レストランにおいて長期間にわたって反生理的な長時間労働に従事した結果、過労等によって体力・免疫力が低下したために心筋炎を発症し、劇症型急性心筋炎のため補助人工心臓を装着することになり、最終的に脳出血によって死亡するに至ったとして、原告A(Eの妻)及び原告B、C(Eの両親)が、Eの使用者である被告会社に対しては、会社法350条又は安全配慮義務違反に基づく損害賠償として、被告会社の代表者である被告Fに対しては、不法行為又は会社法429条1項に基づく損害賠償等を求めた事案である。 (2) 判決は、被告Fは不法行為に基づく損害賠償として、被告会社は会社法350条に基づく損害賠償として、それぞれ連帯して、原告Aに対しては5620万5243円、原告B及び原告Cに対しては、それぞれ1405万1311円の支払等を認めた。 |
参照法条 | : | 会社法350条 会社法429条1項 |
体系項目 | : | 労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/(16) 安全配慮 (保護) 義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 令和2年2月21日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成28年(ワ)3088号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 判例時報2452号59頁 判例タイムズ1472号173頁...等 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/(16) 安全配慮 (保護) 義務・使用者の責任〕 (1)恒常化した著しい長時間労働という過酷な勤務は、被告Fの指示の下に行われていたのであるから、被告Fにおいて、上記のようなEの勤務実態を認識していたことは明らかであるところ、このような状況が長期間にわたって継続した場合には、Eが、十分な睡眠時間を確保することができなくなり、その結果、業務の遂行に伴う疲労が過度に蓄積する状況になることは容易に想定することができたということができる。しかしながら、被告Fは、そのような状況に全く関心を払わず、平成24年11月24日にEが心筋炎との診断を受けて入院するに至るまでの間、Eの負担を軽減させるための措置を一切講じようともしなかったのみならず、同月23日にEが体調の不良を訴えて休日診療所を受診した後に本件レストランに出勤した際にも休息等を取るよう命じることもなく、Eの体調が相当程度悪いことを認識していながら、深夜に至るまで、ほぼ、通常と同様の業務に従事させていたのであるから、被告Fに上記の注意義務違反(過失)があったことは明らかであるといわざるを得ない。 (2)心筋炎の発症の原因となるウイルスに感染した者が、長期間にわたる長時間労働やこれに伴う睡眠不足のため過労の状態にあったところに、心筋炎の前駆症状が現れた後も数日間にわたって過重な労働を続けたことで、より一層生体防御能を低下させ、その結果、ウイルスの増殖を食い止めることができずに、心筋炎を発症するに至った場合には、一定の遺伝的・自己免疫的素因等(上記のとおり、これらは個々人の個体差の範囲内のものにすぎない。)を有する者において、心筋炎が劇症化することは、因果の流れとして一般に想定されるものであったといわざるを得ない。 そうすると、被告Fの上記注意義務違反と、Eが心筋炎を発症し、その後、これが劇症化して重症心不全によるショック状態に陥ったこととの間には、相当因果関係があるというべきである。 |