ID番号 | : | 09344 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 池一菜果園ほか事件 |
争点 | : | 業務上の自死に伴う損害賠償 |
事案概要 | : | (1) 本件は、控訴人会社(有限会社池一菜果園:一審被告)に勤務していた労働者(以下「A」という。)が、長時間労働による心理的負荷がかかっている中で、控訴人会社の代表取締役である控訴人X1の娘であり、常務取締役である控訴人X2による平成22年2月6日及び同月8日のひどい嫌がらせ・いじめ(以下「2月の出来事」という。)によって、業務上強度の心理的負荷を受け、精神障害を発病し、翌同月9日に自死(平成24年11月に労災保険法による業務上災害として認定)したとして、Aの相続人である被告ら(一審原告)が、控訴人会社に対しては安全配慮義務違反に基づき、控訴人X1及び控訴人X2に対しては安全配慮義務違反又は会社法429条1項に基づき、連帯して、損害金等の支払を求める事案である。 (2) 原審判決は、控訴人X1、X2は、いずれも会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うとして、損害賠償を認めた。これに対し、控訴人ら(一審被告ら)が控訴した。 本判決は、控訴人らの請求を棄却した(一審原告の1人の死亡により原判決変更)。 |
参照法条 | : | 会社法429条1項 労働契約法5条 |
体系項目 | : | 労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/ (16) 安全配慮 (保護) 義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 令和2年12月24日 |
裁判所名 | : | 高松高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和2年(ネ)67号 |
裁判結果 | : | 損害賠償請求控訴事件 |
出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 経営法曹研究会報102号1~77頁2021年7月 |
判決理由 | : | 〔労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/ (16) 安全配慮 (保護) 義務・使用者の責任〕 (1)控訴人らは、〈1〉Aが従業員の健康管理に取り組む責任者の立場にあった、〈2〉控訴人X1は、休みの日には完全に休むようAに注意し、早朝の業務時間外の会社出勤をしないように再三諫めていた、〈3〉2月6日及び同月8日の出来事も業務上必要なもので相当な態様のものであった、〈4〉控訴人らにおいて、Aが心身の健康を損ない、精神障害を発病する危険な状態が生ずることを予見することは不可能であったと主張する。 しかしながら、〈1〉の点については、Aが管理監督者(労基法41条2号)に該当しないことからすれば、Aが控訴人らの主張するような立場にあったとはいえない。 〈2〉の点については、控訴人X1の労基署における供述内容からすれば、控訴人X1は、休日出勤や早朝出勤について、Aを諌める言葉をかけていたのではなく、Aを労う言葉をかけていたものと考えるのが相当である。したがって、控訴人X1が、Aの休日出勤や早朝出勤を注意していたとは認められない。 〈3〉の点については、2月の出来事は、これらの控訴人X1及び控訴人X2の言動に一定程度の業務上の必要性があったとしても、その態様として到底相当なものであったとはいえない。 〈4〉の点については、控訴人らにおいて、Aが、自殺前の6か月間における時間外労働によって相応の心理的負荷を受けていたことを認識し又は容易に認識することができたものであり、2月の出来事によりAが相応のストレスを受けたことも認識し又は認識することができたといえるから、このようにAの時間外労働と心理的負荷を認識し又は認識することができたことからすれば、控訴人らにおいて、Aが心身の健康を損ない、何らかの精神障害を発病する危険な状態が生ずることにつき、予見できたというべきである。 (2)当裁判所も、Aの自殺につき、控訴人会社には安全配慮義務違反があり、控訴人X1及び同X2には会社法429条1項の責任があり、Aの損害については4065万1155円と認定するのが相当であると判断する。 |