ID番号 | : | 09346 |
事件名 | : | 債務確認請求、求償金反訴請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 福山通運事件 |
争点 | : | 損害賠償における被用者の使用者に対する逆求償権 |
事案概要 | : | (1)ア 本訴事件は、一審被告(福山通運株式会社)に雇用され、一審被告の業務として自動車を運転していた際に被害者を死亡させる交通事故を発生させ、被害者の相続人の一人に賠償金を支払った一審原告が、一審被告に対し、主位的に、上記交通事故によって生じた被害者の損害全額を被告が負担するとの合意が成立したと主張して同合意に基づき、予備的に、被用者の使用者に対するいわゆる逆求償権に基づき、一審原告が支払った(支払方法は弁済供託である。)賠償金相当額1552万2962円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 イ 反訴事件は、上記交通事故に関し、被害者の他の相続人に対し、賠償金を支払った一審被告が、原告に対し、民法715条3項、自動車損害賠償保障法4条に基づき、求償金1300万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 (2)原判決は、一審原告の予備的請求を認め、839万2222円及びこれに対する遅延損害金を一審被告が一審原告に対し支払うよう命じた。 これに対し、一審被告は、敗訴部分を不服として控訴した。 (3)控訴審判決は、いわゆる逆求償権を認めず、原判決中本訴請求に関する控訴人敗訴部分を取り消し、一審原告の本訴請求を棄却するとともに、一審被告の反訴請求についての本件控訴も棄却した。 |
参照法条 | : | 民法715条3項 |
体系項目 | : | 労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/(22)労働者の損害賠償義務/ |
裁判年月日 | : | 平成30年4月27日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成29年(ネ)第2529号 |
裁判結果 | : | 原判決一部取消自判 |
出典 | : | 最高裁判所民事判例集74巻2号139頁 金融・商事判例1598号15頁 労働判例1224号12頁 交通事故民事裁判例集53巻1号19頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 上告受理申立て |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/(22)労働者の損害賠償義務/〕
(1)民法715条1項は、被害者保護のための規定であって、本来、不法行為者である被用者が被害者に対して全額損害賠償債務を負うべきところ、被害者が資力の乏しいこともある被用者から損害賠償金を回収できない危険に備えて、報償責任や危険責任を根拠にして、使用者にその危険回避の負担を負わせたものであって、本来の損害賠償義務を負うのは、被用者であることが前提とされている。使用者には、本来の損害賠償義務者である被用者に対する求償権を有するものの、信義則上、使用者から被用者に対する権利の行使が制限されることがあると解される。そうすると、民法715条3項の求償権が制限される場合と同じ理由をもって、逆求償という権利が発生する根拠とまですることは困難である。結果が公平に見えることがあるだけでは、理由とはならない。 もっとも、使用者が被用者と共に民法709条の責任を負い、被用者と共同不法行為にある場合には、共同不法行為者間の求償として、これが認められることは別論といえる。 |