ID番号 | : | 09351 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ライフ・イズ・アート事件/東リ事件 |
争点 | : | 偽装請負による労働契約申込みなし |
事案概要 | : | (1) 被告(東リ株式会社)は有限会社ライフ・イズ・アート(以下「ライフ社」という。)間で業務請負契約(巾木工程)及び業務請負契約(化成品工程)を締結して、ライフ社の労働者である原告ら5人は、被告の工場で製品の製造業務に従事していた。 ライフ社は、被告との業務請負契約(巾木工程)について平成29年2月28日をもって終了させることとし、同年3月1日、被告との間で、派遣期間を同日から同月30日までとする労働者派遣個別契約を締結し、原告らを含む12名を巾木工程に派遣した。 一方、被告との業務請負契約(化成品工程)は、平成29年3月31日まで継続し、同日をもって終了した。これに伴い、原告らは、ライフ社から、同月30日限りで他の従業員らとともに整理解雇された。 このため、原告らが、被告に対し、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(ただし、平成24年法律第27号による改正後のもの。以下「労働者派遣法」という。)40条の6第1項5号、同項柱書に基づき、原告らと被告との間に労働契約が存在することの確認及び賃金の支払を求める事案である。 (2) 判決は、偽装請負を認めず、原告の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働者派遣法40条の6第1項5号 |
体系項目 | : | 労働契約 (民事)・1 成立 |
裁判年月日 | : | 令和2年3月13日 |
裁判所名 | : | 神戸地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成29年(ワ)2030号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1223号27頁 労働経済判例速報2416号9頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 土田岳永・LIBRA21巻1号38~39頁2021年1月 岩出誠(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1555号135~138頁2021年3月 竹林竜太郎・経営法曹207号1~7頁2021年3月 |
判決理由 | : | 〔労働契約 (民事)・1 成立〕 (1)請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させる事業者について、労働者派遣か請負の区分は、当該事業者に業務遂行、労務管理及び事業運営において注文主からの独立性があるか、すなわち、〈1〉当該事業者が自ら業務の遂行に関する指示等を行っているか、〈2〉当該事業者が自ら労働時間等に関する指示その他の管理を行っているか、〈3〉当該事業者が、服務規律に関する指示等や労働者の配置の決定等を行っているか、〈4〉当該事業者が請負により請け負った業務を自らの業務として当該契約の注文主から独立して処理しているかにより区分するのが相当である(職業安定法施行規則4条1項、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示(昭和61年4月17日労働省告示第37号)参照)。 (2)現場責任者の配置、ヘルメットによる区分、書面による受発注、日常的な連絡が被告とライフ社の従業員個人との間でなされていなかったことなどから、ライフ社は、被告から独立して業務遂行を行っていたものということができる。 (3)ライフ社の従業員の時間外労働はライフ社の社長の判断でなされていたこと、ライフ社の従業員の勤務評定はライフ社の社長が行っていたことから、ライフ社が自ら労働時間等に関する指示その他の管理を行っていたものということができる。 (4)事故を起こした際には、ライフ社の現場責任者が被告に対して報告するとともに、当該従業員を指導していたこと、シフト、その変更や欠員の補充等はライフ社内でなされていたことから、ライフ社は、その従業員に対し、服務規律に関する指示をなし、その配置を決めていたものということができる。 (5)ライフ社と被告との間に資本関係や役員等の人的関係は存しないこと、製造ラインを月額使用料2万円として被告から賃借していたこと、請負代金は製造原価等を考慮して定められたものであったこと、巾木工程及び化成品工程は従前蓄積されたノウハウ等を有するライフ社の一部門というべき存在で自ら社内教育をしていたことなどから、ライフ社は、被告から請負契約により請け負った業務を自らの業務として被告から独立して処理していたものということができる。 (6)被告が、ライフ社との間の従前の業務請負の実態を糊塗するために労働者派遣契約を締結したものとはいえない。 (7)以上の事情を総合考慮すると、巾木工程及び化成品工程は、遅くとも平成29年3月頃には偽装請負等の状態にあったとまではいうことはできないというべきである。 |