ID番号 | : | 09359 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東京キタイチ事件 |
争点 | : | 解雇権の濫用、安全配慮義務違反 |
事案概要 | : | (1) 本件は、被告(株式会社東京キタイチ)との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、これに基づき被告A工場で就労していた原告が、業務中に右手小指を負傷し、その後被告から普通解雇されたことについて、被告に対し、〈1〉本件解雇は無効であると主張し、原告が雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、雇用契約に基づく賃金及び賞与等の支払を求めるとともに、〈2〉原告が右小指を負傷したこと及び被告が原告の復職要請に真摯に対応しなかったことにつき被告の安全配慮義務違反が認められると主張し、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求等の支払を求める事案である。 (2) 判決は、原告のいずれの主張も棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法第16条 |
体系項目 | : | 解雇 (民事)/3 解雇権の濫用 労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/ (16) 安全配慮 (保護) 義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 令和元年9月26日 |
裁判所名 | : | 札幌地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成30年(ワ)第2143号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1226号13頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇 (民事)/3 解雇権の濫用〕 (1)原告の右小指の状態と作業内容からすれば、原告が製造部に復職した場合、右手に相当の痛みが生じることが予想されるほか、包丁を使えないことで業務に支障が出ること、重い物を持つことで再度疲労骨折等を生じる可能性があること、頻回な手洗いによって手術を繰り返した皮膚が裂けるなどするおそれもあることが指摘でき、これらの事情を考慮すれば、本件解雇時点において、原告が、製造部で従前どおりの作業を行うことは困難であったといわざるを得ない。 (2)2年以上に及ぶ診療期間において、原告が症状固定後は従前どおりの作業を行うことが可能であるという趣旨の医師の診断を受けていたと認めるに足りる証拠はない。 (3)製造部における作業が、冷たいタラコを日常的に取り扱うものであることや、頻回な手洗いが必要であることなどを考慮すれば、重いものを運ぶ作業等の一定の業務軽減がされたとしても、そのことによって製造部への復職が可能であるものとは考え難い。 (4)清掃部に配置転換をした上での復職を提案したにもかかわらず、原告は、慣れた作業であるといった理由から製造部への復帰を希望し、その後、本件解雇に至るまで被告の提案を受け入れなかったのであるから、清掃部に配置転換した上での復職も困難であったといわざるを得ない。 (5)以上によれば、原告は、本件解雇時点において、就業規則17条1項〈3〉に定める解雇事由(精神又は身体の障害により業務に耐えられないと認められたとき)に該当していたものと認められる。 〔労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/ (16) 安全配慮 (保護) 義務・使用者の責任〕 (6)本件事故がかがんでいた同僚を避けようとしたことによって発生したものであるとの主張については、これを客観的に裏付ける証拠はなく、そもそも本件事故が原告の主張するような原因で発生したものといえるのか、疑問を差し挟まざるを得ない。 また、ザルの大きさ、形状、重量等に照らせば、これを5枚重ね持ちしたからといって、たとえば3枚重ね持ちした場合と比較して前方や周囲への視野が有意に狭まるものとは認められず、そのほか、5枚の重ね持ちによって具体的にどのような危険が生じるのか、本件の全証拠によっても明らかではない。そうすると、被告において、5枚の重ね持ちを理由として事故が発生する危険を予見すべき状況であったものとは認められないから、被告が、原告の主張するような対策を講じる義務を負っていたものとはいえず、被告に安全配慮義務違反があるとは認められない。 |