ID番号 | : | 09367 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 公益財団法人グリーントラストうつのみや事件 |
争点 | : | 雇止めの有効性 |
事案概要 | : | (1) 本件は、平成24年11月1日に被告(公益財団法人グリーントラストうつのみや)との間で期間の定めのある労働契約を締結していた原告が、その後4回にわたり更新を繰り返した後、平成30年3月末をもって雇止めを通知されたことに対し、平成29年4月1日に締結した期間の定めのある労働契約は労働契約法19条各号の要件を満たしており、かつ、被告が原告からの更新の申入れを拒絶することは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、被告は上記労働契約と同一の労働条件でこれを承諾したものとみなされ、かつ、同法18条1項により期間の定めのない労働契約に転換されたなどと主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認するとともに、平成30年4月以降の未払い賃金等の支払を求める事案である。 (2) 判決は、同一の労働条件で労働契約の更新申込みを被告は承諾したものとみなされ(労契法19条柱書)、原告の労契法18条1項に基づく期間の定めのない労働契約への転換申込みにより原告と被告には、平成31年4月1日以降、上記有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の条件により期間の定めのない労働契約が締結されたものとみなされることになるとして、原告の請求を認容した。 |
参照法条 | : | 労働契約法18条 労働契約法19条 |
体系項目 | : | 解雇 (民事)/14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め) |
裁判年月日 | : | 令和2年6月10日 |
裁判所名 | : | 宇都宮地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成30年(ワ)454号 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例1240号83頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇 (民事)/14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕 (1)原告の業務実態は、本件各労働契約締結のかなり早い段階から、非常勤としての臨時的なものから基幹的業務に関する常用的なものへと変容するとともに、その雇用期間の定めも、当初予定された3年間(更新を含む)を超えて継続している点で報酬財源確保の必要性というよりむしろ雇止めを容易にするだけの名目的なものになりつつあったとみるのが相当である上、本件各労働契約の各更新手続それ自体も実質的な審査はほとんど行われず、単に原告の意向確認を行うだけの形式的なものに変じていたものといわざるを得ない。 そうすると、上記のような本件各労働契約における雇用期間の定めの意味や目的を考慮したとしても、なお原告の雇用継続に対する期待を保護する必要は高いものというべきであるから、原告において本件労働契約の満了時に同労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものというべきである。 よって、有期労働契約である本件労働契約は労契法19条2号に該当する。 (2)本件労働契約は有期労働契約であるが、労契法19条2号に該当し、労働者たる原告の雇用継続に対する期待は合理的な理由に基づくものとして一定の範囲で法的に保護されたものであるから、特段の事情もなく、かかる原告の合理的期待を否定することは、客観的にみて合理性を欠き、社会通念上も相当とは認められないものというべきである。 本件雇止めにも、いわゆる整理解雇の法理が妥当するものというべきであるから、〈1〉人員整理の必要性、〈2〉使用者による解雇回避努力の有無・程度、〈3〉被解雇者の選定及び〈4〉その手続の妥当性を要素として総合考慮し、人員整理的雇止めとしての客観的合理性・社会的相当性が肯定される場合に限り、本件雇止めには上記特段の事情が認められるものというべきである。 被告は、財政援助団体であるY市(人事課)からの指導を唯々諾々と受け入れ、本件の人員整理的な雇止めを実行したものであって、その決定過程において本件雇止めを回避するための努力はもとより、原告を被雇止め者として選定することやその手続の妥当性について何らかの検討を加えた形跡は全く認められないのであるから、これらの事情を合わせ考慮すると、人員整理を目的とした本件雇止めには、客観的な合理性はもとより社会的な相当性も認められず、したがって、本件雇止めに上記特段の事情は存在しないものというべきである。 以上によれば、本件労働契約の更新申込みに対する本件雇止めは、労契法19条柱書にいう「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」に当たるものというべきである。 (3)以上によれば、被告は、本件労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で同労働契約の更新申込みを承諾したものとみなされる(労契法19条柱書)ところ、前提事実(4)のとおり、原告は、労契法18条1項に基づき期間の定めのない労働契約への転換申込みをしており、これにより原告と被告には、平成31年4月1日以降、上記有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の条件により期間の定めのない労働契約が締結されたものとみなされることになる(なお、労働契約において雇用期間の定めは契約の本質的要素でないから、上記更新後の有期労働契約に基づく請求と上記転換後の期間の定めのない労働契約に基づく請求は訴訟物として同一であると解される。)。 |