ID番号 | : | 09376 |
事件名 | : | 懲戒解雇処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 国立大学法人京都大学事件 |
争点 | : | 精神不調による長期欠勤者に対する懲戒解雇処分の有効性 |
事案概要 | : | (1) 本件は、控訴人(国立大学法人京都大学)の職員であった被控訴人が、控訴人から、平成27年10月頃からの精神的不調により正当な理由なく長期間欠勤を繰り返し、就労義務を果たしていないとの理由で就業規則上の懲戒事由に該当するものとして、平成30年2月2日付けで懲戒解雇処分(以下「本件懲戒解雇」という。)を受けたため、控訴人に対し、本件懲戒解雇が無効であると主張して、雇用契約上の地位を有することの確認を求める事案である。 (2) 原審は、被控訴人の請求を認容する旨の判決を言い渡したところ、控訴人は、これを不服として本件控訴を提起した。 本判決は、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないとして、控訴を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法16条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/ (18) 職務懈怠・欠勤 |
裁判年月日 | : | 令和2年8月5日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和1年(ネ)2758号 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/ (18) 職務懈怠・欠勤〕 (1)被控訴人は精神的不調のため就労できないのであるから、控訴人としては、被控訴人の精神的不調の程度、症状、原因等を明らかにするために、精神科医への受診を再度勧め、これを拒否する場合には、受診を命ずる(本件就業規則57条2項、3項)などし、その診断結果等に応じて必要な治療を勧めた上で休職等の処分を検討すべきであった。 ところが、控訴人は、被控訴人が精神的不調のため就労できないとは認めず、被控訴人が正当な理由なく長期間にわたり就労義務を果たしていないと認め、これが本件就業規則36条1号に規定する「みだりに勤務を欠く」に該当し、48条の2第1号所定の懲戒事由に該当すると判断して本件懲戒解雇にまで踏み切ったものである。この判断は、本件就業規則36条1号、48条の2第1号の解釈適用を誤ったものである。 (2)これに対し、控訴人は、そもそも被控訴人には精神的不調などなかったとし、これがあったとしても軽微であったから、容易には認識し得ず、雇用者としてできる措置はすべて採っていた旨を主張する。 しかしながら、前記認定の事実経過からすれば、控訴人としては、被控訴人が、実際には存在しない職場のパワーハラスメント被害を述べて、これを理由に欠勤を続けていたことを認識し、被控訴人が何らかの精神的不調のため就労できない状態にあるのではないかと案ずることは十分に可能であったものというべきである。少なくとも、本件では、控訴人が労働者である被控訴人の精神的な健康状態について十分な労務管理をしていたにもかかわらず、被控訴人の精神的不調に気付くことができなかったと認めることができない。 (3)したがって、被控訴人の本件欠勤は、本件就業規則36条1号所定の「みだりに勤務を欠くこと」に当たらないものということができ、本件懲戒解雇は、本件就業規則48条の2第1号所定の懲戒事由が存在しないのに、これが存在するとしてされた無効なものというべきである。 |