ID番号 | : | 09381 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 明治機械事件 |
争点 | : | 試用期間の延長の有効性 |
事案概要 | : | (1) 本件は、被告(明治機械株式会社)との間で試用期間のある労働契約を締結していた原告が、被告に対し、2回にわたって延長された試用期間中の平成30年9月30日付けで本採用を拒否(解雇)されたところ、試用期間の延長が無効であるとともに解雇が客観的合理的理由を欠き社会通念上も相当でなく無効であるとして、雇用契約に基づき、〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、〈2〉平成30年10月分の賃金等の支払を求めるとともに、違法な退職勧奨により抑うつ状態を発症して通院を余儀なくされたなどとして、〈3〉不法行為(使用者責任)による損害賠償請求として慰謝料、治療費、弁護士費用相当額等の支払を求める事案である。 (2) 判決は、試用期間の延長及び解雇は無効とし、賃金の支払いを命ずるとともに、退職勧奨の違法性を認め、慰謝料等の支払いを命じたが、原告の退職勧奨により抑うつ状態を発症したとの主張に基づく治療費の請求は棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法16条 民法715条 |
体系項目 | : | 労働契約 (民事)/試用期間/(3) 試用期間の長さ・延長 労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/(16) 安全配慮 (保護) 義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 令和2年9月28日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成31年(ワ)10546号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 判例時報2493号103頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約 (民事)/試用期間/(3) 試用期間の長さ・延長〕 (1)本件雇用契約において、試用期間について平成30年4月1日から同年6月30日までの3か月と規定されているものの延長の規定はなく、被告就業規則9条も「3か月以内」の「試用又は一定期間の見習」を命ずる旨の規定があるものの延長の規定はない。 試用期間を延長することは、労働者を不安定な地位に置くことになるから、根拠が必要と解すべきであるが、就業規則のほか労働者の同意も上記根拠に当たると解すべきであり、就業規則の最低基準効(労働契約法12条)に反しない限り、使用者が労働者の同意を得た上で試用期間を延長することは許される。 そして、就業規則に試用期間延長の可能性及び期間が定められていない場合であっても、職務能力や適格性について調査を尽くして解約権行使を検討すべき程度の問題があるとの判断に至ったものの労働者の利益のため更に調査を尽くして職務能力や適格性を見出すことができるかを見極める必要がある場合等のやむを得ない事情があると認められる場合に、そのような調査を尽くす目的から、労働者の同意を得た上で必要最小限度の期間を設定して試用期間を延長することを就業規則が禁止しているとは解されないから、上記のようなやむを得ない事情があると認められる場合に調査を尽くす目的から労働者の同意を得た上で必要最小限度の期間を設定して試用期間を延長しても就業規則の最低基準効に反しないが、上記のやむを得ない事情、調査を尽くす目的、必要最小限度の期間について認められない場合、労働者の同意を得たとしても就業規則の最低基準効に反し、延長は無効になると解すべきである。 1回目の延長は、やむを得ない事情があったとも、調査を尽くす目的があったとも、認められず、就業規則の最低基準効に反することから無効であり、1回目の延長が有効であることを前提とする2回目の延長及び3回目の延長も無効であるから、本件雇用契約は、試用期間の満了日である平成30年6月30日の経過により、解約権留保のない労働契約に移行したと認められる。 (2)本件について解雇事由は存しないのであり、本件解雇は、客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められず、解雇権を濫用したものとして無効である。その結果、原告は、本件解雇の日以降も、被告との間の労働契約上の権利を有する地位にあることになる。 〔労働契約 (民事)/労働契約上の権利義務/(16) 安全配慮 (保護) 義務・使用者の責任〕 (3)原告に精神的苦痛を与えて退職勧奨に応じさせる目的で本件会議室に一人配置して主に自習させ続けた処遇及び役職者の退職勧奨に係る言動(「謝って済む問題じゃねえだろ。嘘ついてんだぞ、おまえ。」、「おまえは嘘つきだって、言われてるよ。」などと繰り返し非難し、原告が「生産性のないやつ」でその「給料分、他の社員たちに与えた方がより効率的」などと侮辱的表現を用いて退職勧奨したこと)は、その手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しているといえ、原告の人格権を侵害する違法行為というほかなく、不法行為に当たる。そして、上記処遇及び退職勧奨に係る言動が被告の事業の執行について行われたことは明らかであるから、被告は、使用者責任を負う。 |