ID番号 | : | 09397 |
事件名 | : | 賃金支払請求等事件 |
いわゆる事件名 | : | GCA事件 |
争点 | : | 特別手当の賃金該当性 |
事案概要 | : | (1)本件は、被告(GCA株式会社)との間で労働契約を締結している原告が、被告に対し、原告に支払われていた特別手当月額10万円を不支給とすることは同意のない無効な賃金減額であると主張して、賃金請求権に基づき、令和2年1月から本判決確定の日まで、毎月10万円及び遅延損害金の支払を求める事案である。 (2)判決は、特別手当は任意的恩恵的給付にすぎず、労働の対償たる賃金ではないとして、原告の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | |
体系項目 | : | 賃金(民事)/賃金の範囲 |
裁判年月日 | : | 令和3年1月20日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和1年(ワ)30278号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1252号53頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金(民事)/賃金の範囲〕 (1)労働の対償たる賃金(労働基準法11条)を減額するためには、労働契約、就業規則又は労働協約上の根拠、あるいは、労働者の同意(以下、これらを併せて「労働者の同意等」という。)を要するが、支給の有無が使用者の裁量に委ねられている任意的恩恵的給付については、労働の対償たる賃金には該当せず、これを不支給とすることにつき、労働者の同意等を要しないと解される。 (2)そこで、本件特別手当の性質について検討すると、被告は、原告の平成24年9月2日までの育児休業期間が終了した後は、職位がアソシエイトからアナリストとなり、給与が年額800万円(月額66万6800円)から年額720万円となる旨の降格及び降給(いずれも裁判で有効と判断されている。)を行うにあたり、原告に対し、本件通知書を交付して、給与が年額720万円となること、その内訳は、〈1〉基本給として、年額435万円(月額36万2500円)、〈2〉専門職固定残業手当として、年額165万円(月額13万7500円)、〈3〉調整給(特別手当)として、降格による減額分を配慮し、平成24年度限り、年額120万円(月額10万円)である旨通知しているのであり、また、被告の就業規則(給与規程)においては特調整給(特別手当)の定めがないことを踏まえると、平成24年当時において、本件特別手当は、労働の対償ではなく、本件降格による不利益を緩和するための調整給として支払われた任意的恩恵的給付であったことは明らかである。そして、令和2年1月までの間に、本件特別手当の性質が変更されたと認められる事情は存在しないから、本件特別手当は任意的恩恵的給付にすぎず、これを不支給とすることにつき、労働者の同意等を要しないというべきである。 |