ID番号 | : | 09400 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日東電工事件 |
争点 | : | 私傷病による休職期間満了と雇用契約の終了 |
事案概要 | : | (1)被告(日東電工株式会社)に雇用されていた原告は、業務外の事故により負傷し、休職していたところ、被告は、休職期間の満了により、原告との雇用関係が終了したものとした。原告は、休職期間満了時点において休職事由が消滅していたから雇用契約は終了していない旨主張して、被告に対し、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、休職期間満了日の翌日である平成29年2月4日から本判決確定の日までの間の賃金などの支払などを求め提訴した事案である。 (2)判決は、原告の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 障害者雇用促進法36条の3 |
体系項目 | : | 休職/休職の終了・満了 |
裁判年月日 | : | 令和3年1月27日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成29年(ワ)7957号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1244号40頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 野谷聡子・労働法律旬報2001号49~55頁2022年2月10日 |
判決理由 | : | 〔休職/休職の終了・満了〕 (1)休職期間満了時において休職事由が消滅していたか 休職期間満了時において、原告は、本件事故発生当時と同様の1週間当たり5日間、あるいは、それと大きな相違がない日数(例えば、原告主張に係る1週間当たり4日間又は4.5日間)にわたって、現実にC事業所に出勤する形態で労務を提供することができるとは認められない。 上記認定の原告の健康状態及び後遺障害の状況を前提とすると現実的なC事業所での勤務可能日数は、原告自らが希望として表明した1週間当たり1日間若しくは2日間程度を超えるものであったということはできず、多くともその限度にとどまると認められる。 (2)休職前の担当業務を通常程度行うことができるといえるか C事業所での勤務可能日数等の点を度外視したとしても、原告は、休職前の担当業務を通常程度行うことができると解することはできない。 (3)合理的配慮の提供について 確かに、改正障害者雇用促進法36条の3は、事業主はその雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない旨定めており、厚生労働大臣が同法36条の5に基づいて策定した事業主が講ずべき措置に関しての「合理的配慮指針」は、労働者が雇入れ時に障害者ではなかった場合を含む採用後における合理的配慮の提供についても言及がされている。しかしながら、改正障害者雇用促進法36条の3は、ただし書において、「事業主に過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。」と定め、事業主に過重な負担を及ぼす場合、同条に定める措置を講じないことを是認している。 そして、前記認定にかかる原告の業務内容、後遺障害の内容、程度、身体能力及び健康状態、原告の業務内容や就労に伴う危険性(クリーンルームで就業することの危険性を含む。)等を勘案すると、合理的配慮指針に例示される程度の事業主に過重な負担とならない措置をもってしては、原告の業務の遂行は到底困難と解される。このことは、被告が資本金267億円、従業員数5000人を超える大企業であることを考慮しても、本件の事情の下では左右されるものではない。 また、原告は、休職前の担当業務を通常程度行うことができるとは、休職前と完全に同一の労務の提供ができるという意味ではなく、休職前の担当業務のうちの重要な業務の遂行に支障を来さない、あるいは、休職前の担当業務の本質的機能を遂行することができる程度に健康が回復していたといえる場合をいう旨主張するところ、仮に、そのような前提に立ったとしても、既に認定説示した休職前の担当職務の内容、原告の後遺障害の内容、程度、身体能力、健康状態等に照らすと、事業主に過重な負担とならない措置をもってしては、原告が休職前の担当業務のうち、重要な業務の遂行に支障があり、あるいは担当業務の本質的機能を遂行することができる程度に健康が回復していたとはいえないというべきであるから、原告の主張は採用できない。 (4)他の職務等を前提とした休職事由の消滅に関する検討 原告は、休職期間満了時において、配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供の申出をしていたとは認められない。 (5)以上によれば、休職期間満了時において、原告が休職前の職務を通常の程度に行うことができる健康状態を回復したと認められず、また、配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供の申出をしていたとは認められないから、その時点において、債務の本旨に従った履行の提供ができる状態にあるとはいえず、したがって、休職事由が消滅したとはいえない。 なお、C事業所における業務については、休職前の業務であるか否かを問わず、就労困難と認められる。 |