全 情 報

ID番号 09401
事件名 地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 日東電工事件
争点 私傷病による休職期間満了と雇用契約の終了
事案概要 (1)被控訴人(日東電工株式会社)に雇用されていた控訴人は、業務外の事故により負傷し、休職していたところ、被控訴人は、休職期間の満了により、控訴人との雇用関係が終了したものとした。控訴人は、休職期間満了時点において休職事由が消滅していたから雇用契約は終了していない旨主張して、被控訴人に対し、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、休職期間満了日の翌日である平成29年2月4日から本判決確定の日までの間の賃金などの支払などを求め提訴した事案である。原審では、控訴人の請求が棄却されたため、控訴したものである。
(2)控訴審判決も、控訴人の請求を棄却した。
参照法条 障害者雇用促進法36条の3
体系項目 休職/休職の終了・満了
裁判年月日 令和3年7月30日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 令和3年(ネ)486号
裁判結果 棄却
出典 労働判例1253号84頁
労働経済判例速報2460号27頁
審級関係 上告、上告受理申立て
評釈論文 野谷聡子・労働法律旬報2001号49~55頁2022年2月10日
判決理由 〔休職/休職の終了・満了〕
(1)控訴人は、労働者が休職事由は消滅したと主張しているにもかかわらず、使用者が休職事由は消滅したと認めずに復職を認めないままに休職期間が満了した場合、復職を認めなかった使用者の判断には、労働契約法16条の適用又は準用により、客観的な根拠に基づく合理的な判断であるかどうか、社会通念上相当であるかが検討されるべきであるのに、原審はこの点を検討しておらず、判断を誤っている旨主張する。
 しかしながら、本件退職処理は、被控訴人の就業規則12条6号に基づく、休職期間の満了による被控訴人の社員の資格喪失によるものであり、被控訴人が休職期間の満了時に控訴人を解雇したものではないから、当然に解雇に関する労働契約法16条が適用又は準用される局面ではない。
(2)控訴人は、休職事由が消滅したといえるかどうかは、労働者が労務の提供を申し出ていたかどうかとは別問題であり、従前とは異なる他の業務について労働者がその履行の提供を申し出ているかどうかにかかわらず、客観的にみて、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における従業員の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができるかが判定されるべきである旨主張する。
 しかしながら、平成28年8月以降、控訴人と被控訴人の担当者は控訴人の復職に関してやりとりをし、被控訴人の担当者は、控訴人のQ1事業所以外での就労可能性を考慮し、控訴人にもQ1事業所以外での業務についても水を向けていたが、控訴人は、最終的に、平成29年1月23日、Q1事業所への復職を希望する意思を明示したのであるから、被控訴人としてはその当否を検討すれば足りるのであり、控訴人が配置される現実的可能性があると認められる全ての業務について、控訴人による労務の提供の可否を検討すべき義務があったということはできない。