ID番号 | : | 09416 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ヴィディヤコーヒー事件 |
争点 | : | 事業譲渡と退職金の支払い |
事案概要 | : | (1)本件は、ダートコーヒー株式会社(後に会社分割を行い、会社分割前を「旧ダート」という。)に採用され、旧ダートが経営する店舗で勤務し、旧ダートが被告ヴィディヤコーヒー株式会社(Vidya Japan ㈱(以下「Vidya」という。)が新設した会社)に同店舗の事業を譲渡した後も同店舗で引き続き勤務して退職した原告が、被告に対し、〈1〉主位的に、被告は旧ダートから原告との間の雇用契約を従前の労働条件のまま引き継いだと主張し、雇用契約終了に基づく退職金請求として、旧ダートに採用されて被告を退職するまでの期間にかかる退職金461万9167円等の支払を求め、〈2〉予備的に、被告は旧ダートから原告に対する退職金債務を引受け、又は会社法22条1項に基づき譲受会社として同債務を弁済する責任があると主張し、債務引受又は会社法22条1項に基づき、旧ダートで勤務していた期間にかかる退職金415万9167円等の支払を求め、補助参加人が原告に補助参加した事案である。 (2)判決は、原告の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働基準法24条 会社法22条 |
体系項目 | : | 賃金 (民事) /退職金/ (18) 退職金の支払義務者 |
裁判年月日 | : | 令和3年3月26日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和1年(ワ)7816号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1245号13頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 南健悟・季刊労働法277号214~215頁2022年6月 |
判決理由 | : | 〔賃金 (民事) /退職金/ (18) 退職金の支払義務者〕 (1)旧ダートとVidyaとの間で、本件事業譲渡契約の条件交渉の際、本件店舗等の従業員の処遇について、勤務地、給与、交通費、店舗における立場を変えずに被告が引き継ぐものの、Vidyaにおいて退職金の定めはないことが明らかにされていたこと、Aから本件店舗等の各店長に対しても、経営者が変わっても雇用条件や地位に変更はないが退職金はなくなること、ただし旧ダートの下での退職金は旧ダートにおいて支払うことが説明されたこと、その上で、原告を含む本件店舗等の店長は、Vidyaが設立した被告との間で新たに雇用契約書及び労働条件通知書を取り交わし、本件店舗等のアルバイトは、改めて被告に履歴書を提出し、被告との間で労働条件通知書を取り交わしていることが認められ、これらの事実によれば、本件事業譲渡契約において、Vidyaは、本件店舗等の従業員が望めば、勤務地、給与、地位等の条件を変えることなく被告において雇用を維持することを約したにすぎず、被告においては退職金の定めがないこともあって、被告による雇用を望む従業員とは新たに雇用契約を締結し直すことが予定されていたものであり、原告についても、本件雇用契約書及び本件労働条件通知書の内容で、被告と新たな雇用契約を締結したというべきである。 以上によれば、旧ダートと原告との雇用契約が被告に承継されたとの原告の主張は採用できず、雇用契約の承継に伴い退職金に関する権利義務関係も被告に承継されたとする原告の主張には理由がない。 (2)本件全証拠によっても、被告と旧ダートとの間で、旧ダートの下で発生した原告に対する退職金債務を被告が引き受ける旨の合意があったと認めるに足りない。 (3)旧ダートは常務取締役Aを通じて、原告に対し、旧ダートの下で発生した退職金債務は旧ダートにおいて支払う旨を伝え、被告は、本件雇用契約書及び本件労働条件通知書を通じて、原告に対し、退職金債務を弁済する責任を負わない旨を通知したということができる。 したがって、被告に会社法22条1項は適用されないというべきであり、旧ダートの原告に対する退職金債務について被告に会社法22条1項の責任があるとの原告の主張は採用できない。 |