全 情 報

ID番号 09425
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 ストーンエックスフィナンシャル事件
争点 整理解雇の有効性、賞与の支払い
事案概要 (1)本件は、被告(旧「ゲインキャピタル・ジャパン株式会社」から「ストーンエックスフィナンシャル株式会社」に商号変更)との間で雇用契約を締結していた原告が、被告に対し、被告が原告にした平成31年3月8日付け解雇について無効であると主張し、被告に対し、〈1〉雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、〈2〉雇用契約による賃金支払請求権に基づく賃金等の支払を求めるとともに、〈3〉雇用契約上賞与を支払う旨の約定があったなどと主張して、雇用契約による賞与支払請求権に基づく賞与等の支払を求める事案である。
(2)判決は、解雇権の濫用であるとして、原告の〈1〉〈2〉の請求を認め、〈3〉の請求を棄却した。
参照法条 労働契約法16条
体系項目 解雇 (民事)/ 整理解雇/ (1) 整理解雇の要件
賃金 (民事)/ 賞与・ボーナス・一時金/ (1) 賞与請求権
裁判年月日 令和3年4月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成31年(ワ)5969号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇 (民事)/ 整理解雇/ (1) 整理解雇の要件〕
(1)本件解雇は、いわゆる整理解雇であるところ、整理解雇が有効か否かを判断するに当たっては、〈1〉人員削減の必要性、〈2〉解雇回避努力、〈3〉被解雇者の選定の妥当性、〈4〉手続の相当性に関する具体的事情を総合的に考慮した上で、本件解雇が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないか否か(労働契約法16条)を判断するのが相当である。
(2)移転価格会計制度で米国親会社が上記赤字による損失を引き受けることで被告の販売費及び一般管理費に7パーセントを上乗せした収入を得ることができていたところ、米国親会社から被告に対して繰り返し経費削減要求がされる中で人員削減も要求されたのであるから、〈1〉人員削減の必要性はあるといえる。
(3)被告は、希望退職者募集ないし退職勧奨について、対象者を限定して実施した旨主張しつつ、具体名を挙げて提示条件を含めて説明できているのは原告のみであり、平成30年2月ころに実施した退職勧奨についてLがI及びFの名前を挙げるものの提示条件及びその他の対象者氏名は明らかにできない旨供述している。原告は、原告以外に対する希望退職者募集事実を否認しているところ、被告は希望退職者募集に係る詳細な事実についてこれを認めるに足りる証拠を提出しないから、本件判断にあたり、希望退職者募集は原告に対するもの以外は有無ないし内容について不明という前提で判断するほかない。
 したがって、〈2〉解雇回避努力を認めることはできない。
(4)原告の被告に対する残業代等の請求で原告・被告間の対立が顕著になったことが、被解雇者の選定に影響した可能性も否定し難く、〈3〉被解雇者の選定の妥当性にも疑問が残るといえる。
(5)前記(2)ないし(4)によれば、〈1〉人員削減の必要性はあるといえるものの、〈2〉解雇回避努力は甚だ不十分でこれを認めることができず、〈3〉被解雇者の選定の妥当性にも疑問が残ることから、〈4〉手続の相当性に関する具体的事情を検討するまでもなく、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であるとも認められず、解雇権を濫用したものとして無効というほかない。
 〔賃金 (民事)/ 賞与・ボーナス・一時金/ (1) 賞与請求権〕
(6)本件雇用契約において、賞与は、権利として付与されるものではなく、その支給の有無及び額は被告(米国親会社)の裁量により決定するものとされているにすぎないといえ、その具体的な請求権は、原告が本件雇用契約においてその支給を受け得る資格を有していることから直ちに発生するものではなく、その支給の実施及び具体的な支給額又は算定方法についての使用者の決定があって初めて発生するものというべきである。そして、原告は、被告において原告につき本件請求に係る賞与の支給の実施及び具体的な支給額又はその算定方法に係る決定がされたことを認めるに足りる証拠を提出していない。そうすると、本件請求に係る賞与は、その支給を求め得る具体的な請求権が発生しているとは認められない。