ID番号 | : | 09436 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 人材派遣業A社ほか事件 |
争点 | : | セクハラ、パワハラの有無 |
事案概要 | : | (1)本件は、人材派遣事業、人材紹介事業、アウトソーシング事業、再就職支援事業、教育・研修事業等を目的とする株式会社である被告会社のB支店長であった原告(女性)が、〈1〉同社取締役である被告Yからセクシュアルハラスメント及びパワーハラスメント(以下、それぞれ「セクハラ」、「パワハラ」という。)を受けたこと、並びに被告会社が被告Yによる各ハラスメントを把握した後も原告に対する適切な支援をしなかったことによって、抑うつ状態になったなどと主張して、被告らに対し、民法709条、同715条及び同415条に基づき、333万7631円の損害賠償金等の連帯支払を求めるとともに、〈2〉被告会社が被告Yによるハラスメントを把握した後も原告に対する適切な支援を行わなかったため、就労困難な状態となり休職することになったなどと主張して、被告会社に対し、民法536条2項に基づき、原告が休職した平成30年1月以降の賃金(毎月44万5000円)等の支払をそれぞれ求める事案である。 (2)判決は、セクハラ、パワハラの事実を認定し、〈1〉については、被告ら(被告Y、被告会社)に対し、原告に対して、民法709条及び715条1項に基づき、連帯して168万4210円の損害賠償金等の支払、〈2〉については、被告会社に対し、原告に対して、民法536条2項に基づき、休職期間中の平成30年1月1日から平成31年3月31日までの期間の所定賃金等の支払、を命じた。 |
参照法条 | : | 民法536条2項 民法709条 民法715条1項 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則 (民事)/ 均等待遇 / (11) セクシャル・ハラスメント アカデミック・ハラスメント |
裁判年月日 | : | 令和3年6月23日 |
裁判所名 | : | 札幌地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成30年(ワ)1012号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例1256号22頁 |
審級関係 | : | 控訴(後、取下げ) |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則 (民事)/ 均等待遇 / (11) セクシャル・ハラスメント アカデミック・ハラスメント〕 (1)(セクハラについて) 被告Yが、〈1〉平成28年11月9日、原告に対して「ホテルに遊びに行っていいか」などと述べて自身の性的願望を露骨に示した行為、〈2〉同日以降に本件LINEメッセージ等を送信するなどした行為、及び〈3〉同年11月24日及び同年12月13日、原告に対し、手を重ねるような形で握ったり、突然キスをして胸を触ったりした行為は、不法行為を構成する。 (2)(パワハラについて) 被告Yは、平成29年5月頃、一方的に好意を寄せていた原告が他の従業員に対してセクハラ被害を相談したことを知り、不快感を抱くとともに、その報復として、同月以降、それまでの友好的な態度を一変させ、〈1〉原告が作成した人事考課表につき、「1を付けた管理者なんて今まで見たことがない」などと述べて原告を強く叱責したり、〈2〉B支店の従業員も同席した被告会社の会議の場で、「この数字は支店長としてどう思っているのか」、「こんなマネージメントは聞いたことがない」などと発言して、公開の場で原告の支店長としての資質を貶めたり、〈3〉改善点の指導を求める原告に対し、「自分が一番正しいと思っている」などという人格否定につながる発言をしたものと評価できる。原告は、セクハラ被害の相談を被告Yに知られたことが、同人が態度を一変させた理由であることを知り、これらの被告Yの言動によって心身に不調をきたし、退職を考えるようになるまで追い込まれた。 これらの被告Yの行為は、いずれも業務上の指導の名を借りて行われたものであるが、原因とされた原告の行為内容等に照らし、必要かつ相当な範囲を逸脱するものといえ、直属の上司としての立場を利用したハラスメントと評価できるから、不法行為を構成する。 (3)本件不法行為は、いずれも直属の上司という立場を背景として、被告会社における会議や、終業後の従業員同士の懇親会(ないしその延長)という場で行われたものであるから、被告会社の職務との関連性(「事業の執行について」)が認められる。 したがって、被告会社は、本件不法行為によって原告に生じた損害につき、使用者責任を負う(民法715条1項)。 |