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ID番号 09446
事件名 未払賃金請求事件
いわゆる事件名 メイト事件
争点 賃金の一方的減額
事案概要 (1)1 本件は、被告(株式会社メイト)に雇用されている原告が、平成25年12月の雇用契約の締結に際し原告がそれ以前に勤務していた会社から得ていた金員の名目及び金額について不実の説明をしたことを理由として、平成30年4月分以降の基本給を従前の月額40万円から月額34万円に減額されたことの無効を主張して、被告に対し、当該雇用契約に基づき、〈1〉賃金の未払分(月額6万円)等の支払を求める(以下「本件支払請求」という。)とともに、〈2〉原告が被告に対し減額前の基本給月額40万円の支払を受ける雇用契約上の地位にあることの確認を求める(以下「本件確認請求」という。)事案である。
(2)判決は、本件支払請求を認容し、本件確認請求については確認の利益を欠くとして棄却した。
参照法条 労働基準法24条
体系項目 賃金 (民事)/ 3 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 令和3年9月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 令和2年(ワ)10823号
裁判結果 一部却下、一部認容
出典 D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金 (民事)/ 3 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額〕
(1)労働者が賃金の減額について長期間異議を述べずにいたことをもって直ちに当該賃金減額について黙示に合意したといえるものではない。そして、原告が本件賃金減額を了承したことを窺わせる積極的言動に及んだ事実を認めるに足りる証拠はなく、むしろ被告が原告に減額後の賃金を明記した契約書への署名押印を求めたところ、原告がこれに応じず、被告から交付された「質問状」と題する書面に「雇用契約は、従前締結したものがあるので、再契約は必要ないと思います。」、「賃金については従前どおりでお願いします。」などと記載して被告に提出した事実が認められるから、原告が本件賃金減額について黙示に合意したということはできない。
(2)被告の援用する賃金規程の定めは、「賃金は、従業員の〈1〉年齢、経験、技能、〈2〉職務内容及びその職責の程度、〈3〉勤務成績、勤務態度等を総合勘案してその金額を決定する。」、「会社の業績低下、または従業員の〈2〉の変更(軽減)、〈3〉が良好でない時は、従業員に説明して賃金を減額し(以下略)」という具体的基準を欠くものであって、特別な事情のない限り、かかる抽象的な就業規則の規定により確定的に合意された賃金を減額することはできないというべきである。
(3)本件確認請求は、本件雇用契約に基づき基本給月額40万円の支払を受ける地位にあることの確認を求めるものであるところ、原告は、本件雇用契約に基づき、当該賃金と被告による減額後の賃金との差額(月額6万円)の支払を求める給付の訴えを提起することができる(現に本件支払請求に係る訴えを提起している)以上、本件確認請求に係る訴えは、確認の利益を欠くというべきである。