ID番号 | : | 09462 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件、地位確認請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 旭川公証人合同役場事件 |
争点 | : | セクハラ、違法な退職勧奨による損害賠償 |
事案概要 | : | (1)本件は、公証人である控訴人(一審被告)と労働契約を締結し、書記として勤務していた被控訴人(一審原告)が、〈1〉一審被告による多数回のメッセージ等の送信、身体的接触及び性的言動等のセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)行為並びに違法な退職勧奨行為によって、PTSD等の精神疾患を発症し、就労不能となるなどの損害を被ったと主張して、一審被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償等の支払を求めた事案(第1事件)と、〈2〉一審原告がした退職の意思表示は一審被告の上記〈1〉の不法行為によるものであるから無効であるか、取り消すなどと主張して、一審被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、令和元年8月から賃金、賞与等の支払を求め、予備的に、一審原告は上記〈1〉の不法行為によって退職を余儀なくされ、賃金及び賞与相当額の損害を被ったと主張して、不法行為に基づき、将来の賃金及び賞与相当額の一部等の支払を求めた事案(第2事件)である。 (2)一審(札幌)地裁判決は、一審被告が一審原告に対し時間を問わず多数回のメッセージ等を送信して精神的苦痛を与えたことなどによる損害賠償を認め、その余の請求は棄却した。これに対し、一審原告及び一審被告はそれぞれの敗訴部分を不服として控訴した。 (3)控訴審判決は、原判決の一部を変更し、第一事件についての一審原告に対する損害賠償額を20万円から30万円に増額し、一審原告及び一審被告のその他の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 民法709条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則 (民事)/ 均等待遇/ (11) セクシャル・ハラスメント アカデミック・ハラスメント 退職/5 退職勧奨 |
裁判年月日 | : | 令和3年11月19日 |
裁判所名 | : | 札幌高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和3年(ネ)180号 |
裁判結果 | : | 原判決一部変更、控訴一部棄却 |
出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則 (民事)/ 均等待遇/ (11) セクシャル・ハラスメント アカデミック・ハラスメント〕 (1)被告は、原告に対し、時間を問わず多数回のメッセージ等を送信したほか、本件会食の後に、一審原告の承諾なく、その掌を指でなぞったことにより精神的苦痛を与えた。そして、被告による違法な退職勧奨等があったとまでは認められず、被告の不法行為と原告の退職の意思表示との間に相当因果関係までは認められないものの、被告の上記不法行為は、原告が被告に対する嫌悪感を抱く端緒になったものと推認され、原告が退職の意思表示をするに至った動機として、被告に対する嫌悪があったことは否定できない。これら不法行為の態様やその後の事情等、本件記録に顕れた事情の一切を総合的に勘案すれば、原告の被った精神的苦痛を慰謝するための額として30万円が相当である。 〔退職/5 退職勧奨〕 (2)一審原告が、平成30年11月29日、一審被告に対し、本件退職届を提出し、一審被告がこれを受理したことにより、一審原告が令和元年7月31日付けで退職する旨の合意が成立したものといえる。さらに、一審原告が、平成30年12月6日、一審被告に対し、離職日を平成31年3月31日とする離職証明書(草案)を提出し、一審被告がこれに押印するなどのやりとりの結果、退職日を同日に前倒しにする旨の合意が成立したものといえる。 |