ID番号 | : | 09469 |
事件名 | : | 無期労働契約の地位確認及び損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 学校法人専修大学(無期転換)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | (1)本件は、被告(学校法人専修大学)との間で、平成元年から外国語の非常勤講師として、有期労働契約を締結して更新している原告が、被告に対し、令和元年6月20日、労働契約法18条1項に基づき無期転換の申込みをしたが、被告は、原告と被告との間の労働契約は、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(以下「科技イノベ活性化法」という。)15条の2第1号に該当し、契約期間が10年を超えるまで無期転換申込権は発生しないため、原告に無期転換申込権を認めなかった。このため、原告は、被告との間に、当時の有期雇用契約の契約期間満了日の翌日(令和2年3月14日)を始期とする期間の定めのない労働契約が成立したと主張し、かつ、令和元年12月16日以降、前記始期に至るまで、被告が原告に対し無期転換申込権を認めない取扱いをしたことは違法であると主張して、期限の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、不法行為に基づく慰謝料100万円の支払等を求める事案である。 (2)判決は、原告が期限の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることを認容し、慰謝料請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法18条 科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律15条の2 大学の教員等の任期に関する法律5条 |
体系項目 | : | 労働契約 (民事)/ 労働契約の期間 |
裁判年月日 | : | 令和3年12月16日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和2年(ワ)10360号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 判例時報2541号74頁 労働判例1259号41頁 労働法律旬報2011号77頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 本久洋一・労働法律旬報2009号48~49頁2022年6月10日 田渕大輔・労働法律旬報2011号28~32頁2022年7月10日 田渕大輔・季刊労働者の権利346号110~115頁2022年7月 高仲幸雄・経営法曹214号109~123頁2022年12月 |
判決理由 | : | 〔労働契約 (民事)/ 労働契約の期間〕 (1)使用者である被告との間に期間の定めの有無について争いがあることにより、原告には雇止めによる契約終了の危険又は不安があり、これを除去するためには、被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切であると認められる。 以上から、原告の地位確認請求については確認の利益がある。 (2)科技イノベ活性化法15条の2第1項2号の「研究者」は、研究開発法人又は有期労働契約を締結している大学等において業務として研究開発を行っている者であることを要すると解すべきであり、被告の設置する専修大学において、学部生に対する初級から中級までのA語の授業、試験及びこれらの関連業務にのみ従事している原告は、「研究者」に該当しないというべきである。 原告が、被告に対し、無期転換申込みの意思表示をした令和元年6月20日、労契法15条1項に基づき、原告と被告との間に、当時の有期雇用契約の契約期間満了日の翌日である令和2年3月14日を始期とする期間の定めのない労働契約が成立したものと認められる。 (3)被告の原告についての無期転換申込権を認めない取扱いという事実行為によって、原告の無期労働契約上の権利を有する地位が影響を受けることはなく、原告が経済的に不利益を受けた事実はなく、無期労働契約上の権利を有する地位を確認する判決によっては回復することができないほどの精神的苦痛を受けたともいえないから、損害は発生していないものと認めるのが相当である。 したがって、被告が原告に対し無期労働申込権を認めない取扱いをしたことは、不法行為に該当せず、原告の不法行為に基づく損害賠償請求は、理由がない。 |