全 情 報

ID番号 09474
事件名 未払賃金等請求事件
いわゆる事件名 株式会社浜田事件
争点 就業規則に規定のない固定残業代の有効性
事案概要 (1)本件は、被告(住宅設備機器、空調設備機器の販売、修理及び施工、割賦販売及び斡旋並びに割賦販売に係る契約締結代行業等を目的とする株式会社浜田)の従業員としてガス機器の修理や販売の営業に従事していた原告が、被告に対し、外勤手当が月36時間の固定残業代であることは認められないこと及び時間外労働時間数が不足していることなどとして、不足分の時間外割増賃金、労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求める事案である。
(2)判決は、外勤手当が月36時間の固定残業代であったことは有効と認めた上で、原告の時間外労働時間の不足分の賃金請求の一部及び付加金の支払を認容した。
参照法条 労働基準法37条
体系項目 賃金 (民事)/ 割増賃金/ (6) 固定残業給
裁判年月日 令和3年12月27日
裁判所名 大阪地堺支
裁判形式 判決
事件番号 令和1年(ワ)1049号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1267号60頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔賃金 (民事)/ 割増賃金/ (6) 固定残業給〕
(1)雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきである(最高裁判所平成30年7月19日第一小法廷判決同旨。集民259号77頁)。
(2)被告において就業規則はあるが賃金規程は存在せず、雇用契約に係る契約書等も存在しない。しかしながら、被告は、入社面接の際、原告に対し、月給には36時間分のみなし残業手当が含まれることなど求人募集に記載された条件を説明したこと、原告が被告に入社した後、年に2回、定期的面接が行われ、モニターに映し出された図表には、「※外勤手当について ・外回り営業マン及び施工者に対し、36時間分の残業代相当の外勤手当を支給 ・残業単価は、基本給与(外勤手当、調整手当を除く基準内給与)/160時間(月間基準労働時間)×1.25で算定」と記載されていたこと、原告が見た被告の求人募集に「※月給額には36時間分のみなし残業手当が含まれています。残業時間がそれより少なくても減額することはありません。」と記載されていたことが認められることから、被告は原告に対し、外勤手当は36時間分のみなし残業手当であることを説明し、原告もこれを理解していたと認められる。
 そして、被告は原告に対し、外勤手当と他の手当を区別して賃金を支給していたのであるから、固定残業代の有効要件を満たしているといえる。