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ID番号 09476
事件名 休業補償給付支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 国・所沢労働基準監督署長(埼九運輸)事件
争点 給付基礎日額の算出の際の固定残業代の有効性
事案概要 (1)本件は、一般輸送業を営む埼九運輸株式会社(以下「本件会社」という。)においてトラック運転手として運送業務等に従事していた原告が、業務による過重負荷が原因で不安定狭心症を発症したとして、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づき、A労働基準監督署長(以下「監督署長」という。)に対して休業補償給付を請求したところ、監督署長は運行時間外手当が法定内時間外勤務、法定外時間外勤務、深夜勤務及び休日勤務に対する対価としての定額手当に当たるとの前提で給付額の基礎となる給付基礎日額を計算し休業補償給付を支給する旨の処分をしたが、原告において、当該処分は給付基礎日額の算定に誤りがあるとして、被告に対し、当該処分の取消しを求めた事案である。
(2)判決は、原告の請求を認容し、当該処分を取り消した。
参照法条 労災保険法14条
体系項目 労災補償・労災保険/補償内容・保険給付/ (11) 給付基礎日額、平均賃金
裁判年月日 令和4年1月18日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 令和1年(行ウ)321号
裁判結果 認容
出典 判例時報2563号73頁
労働判例1285号81頁
D1-Law.com判例体系
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険/補償内容・保険給付/ (11) 給付基礎日額、平均賃金〕
(1)基本給と運行時間外手当の金額の比率及び基本給の1時間当たりの単価、運行時間外手当に見合う法定外時間外労働時間数、基本給の増額と運行時間外手当の減額の経緯等の事情を考慮すれば、本件会社が原告に対して支払った運行時間外手当には、法定外時間外勤務に対する対価以外のものを相当程度含んでいるものとみるのが相当である。
 以上によれば、原告と本件会社との雇用契約において、運行時間外手当が、法定外時間外勤務に対する対価として支払われるものとされているものと認めることはできない。
  したがって、被告の主張につき、本件会社が原告に対して支払った運行時間外手当が法定外時間外勤務に対する対価としての定額手当に当たる旨を主張するものと善解したとしても、これを採用することはできない。
(2)したがって、運行時間外手当を固定残業代として有効であるとして平均賃金を算出して給付基礎日額を定めた本件処分は違法であるといわざるを得ず、本件処分は取消しを免れない。