ID番号 | : | 09478 |
事件名 | : | 降格処分無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ネイルパートナー事件 |
争点 | : | 上司以外の従業員がした注意指導を理由とする懲戒処分の有効性 |
事案概要 | : | (1) 本件は、美容用品及び化粧品の販売等を目的とする株式会社である被告(ネイルパートナー株式会社)の管理部において、経理担当の係長であった原告が、〈1〉令和2年2月1日付けで係長から一般職に降格されそれに伴って減給されたことについて、当該降格及び減給が無効であるとして、被告に対し、係長たる地位にあることの確認並びに減給された月額給与43万4000円及び残業代1641円の支払、〈2〉新年会の参加が業務であるとして賃金支払請求権に基づき未払賃金7077円の支払、〈3〉未払の賞与があるとして賞与支払請求権に基づき合計68万5300円の支払、〈4〉各種の嫌がらせを受けたとして不法行為による損害賠償請求に基づき64万6800円の慰謝料の支払、〈5〉令和3年6月29日付けで受けたけん責処分(原告が令和2年6月及び7月の出退勤時間の記録を修正したことが就業規則上の懲戒事由に当たることを理由とするもの)が無効であるとしてその無効確認を求める事案である。 (2)判決は、原告の〈1〉の請求を認容し、〈5〉請求を却下し、その余の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用 |
裁判年月日 | : | 令和4年1月25日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和3年(ワ)7134号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部却下、一部棄却 |
出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用〕 (1)原告の職制上の上司は、管理部のGであったことが認められるから、G以外のEなどの従業員からの原告に対する注意指導が仮にあったとしても、同僚からの不服を述べるにとどまるものであり、被告による原告に対する注意指導とみることはできない。 そして、Gが、原告に対し、注意指導をしていたかどうかについては、令和元年9月6日の業務日報及び同月24日の業務日報によれば、Gが他の従業員から原告の退勤に対するクレームを受けたことは認められるが、Gが原告の退勤について原告を注意指導したことを認めるに足りるものではない。そして、令和元年11月13日、Gと原告が原告の勤務態度について電話で話合いをし、その中で原告がだらだら動いているように見えるという他の従業員からのクレームを受けたことについて、周りからそうみられるのでは役職者としては足りない旨指導したことが認められるが、掃除については原告から掃除をしているという反論を受けてそれ以上追及はしていないことが認められる。そして、これ以外にGが原告を指導したことを認めるに足りる証拠はなく、上記令和元年11月13日の指導をもって、被告が原告の業務能力、勤務態度について十分に指導したとはいえない。 したがって、本件降格減給処分については、被告からの原告に対する注意指導を踏まえたものではなく、被告の人事権の逸脱濫用があるものといえるから、無効であるというべきである。 (2)Fは、令和2年6月及び7月の当時原告の上長であったのであり、原告がした出退勤記録の修正の申出を断ることができる立場にあり、かつ、これを断ることについて特に支障はなかったものと認められる。そもそもFが、原告の上記申出を断れば足りたことであり、その申出を承認している以上、上記申出をもって原告を懲戒することは懲戒権の濫用に当たり無効である。 したがって、本件けん責処分は無効である。ただし、本件けん責処分は、過去の法律行為であるから、現時点においてその無効を確認する利益は認められない。 |