ID番号 | : | 09479 |
事件名 | : | 地位確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 学校法人茶屋四郎次郎記念学園(東京福祉大学)事件/学校法人茶屋四郎次郎記念学園事件 |
争点 | : | 教員の雇止めの有効性 |
事案概要 | : | (1)本件は、B大学を設置・運営する学校法人である被告との間で、平成25年4月1日以降期間を1年とする有期労働契約を締結・更新し、同大学の専任講師として勤務していた原告が、被告から平成31年3月31日までで雇止めとする(有期労働契約の更新の申込みの拒絶)とされたことから、被告に対し、〈1〉主位的に、労働契約法18条1項に基づいて期間の定めのない労働契約が締結されたものとみなされること、〈2〉予備的に、原告において上記有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があり、当該雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとはいえず、同法19条により、同一の労働条件で有期労働契約が更新されたものとみなされることを主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、当該労働契約に基づく賃金等の支払を、それぞれ求める事案である。 (2)判決は、労働契約法18条1項に基づく無期転換については認めなかったが、雇止めは無効であるとして、原告が労働契約上の権利を有する地位にあること及び当該労働契約に基づく賃金等の支払請求を認容した。 |
参照法条 | : | 教員任期法7条 労働契約法18条 労働契約法19条 |
体系項目 | : | 解雇 (民事)/ 短期労働契約の更新拒否 (雇止め) |
裁判年月日 | : | 令和4年1月27日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和1年(ワ)15614号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例1268号76頁 労働経済判例速報2486号14頁 労働法律旬報2011号60頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 確定 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇 (民事)/ 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕 (1)原告は、B大学の専任講師であるから、大学の教員等の任期に関する法律(以下「教員任期法」という。)所定の「教員」に該当し、原告と大学を設置する学校法人である被告との間で締結された有期労働契約については、教員任期法7条が適用される。したがって、原告が被告に対して無期転換申込みを行うためには通算契約期間が10年を超えていることが必要となるところ、本件無期転換申込みの時点で原告と被告の間の有期労働契約の通算契約期間は10年に満たないから、被告が本件無期転換申込みを承諾したものとみなされることはないというべきである。 なお、教員任期法に労働契約法の上記特例を設ける改正をした平成25年12月13日号外法律第99号の附則5条1項は、大学の教員であって教員任期法7条の施行日前に有期労働契約の通算契約期間が5年を超えることとなったものに係る無期転換申込みについては、従前の例による旨の経過措置を定めているが、同条の施行日である平成26年4月1日時点では、原告が被告との間で締結した有期労働契約の通算契約期間は1年であったから、上記経過措置は適用されない。 (2)原告は、合理的な理由なく一方的に感情を高ぶらせて及んだ暴力的行為に対して本件けん責処分を受けたこと(理由〈1〉)、本件留学生に対する不適切な発言に対して本件厳重注意を受けたこと(理由〈2〉)、B大学のオリエンテーションに複数回遅刻し、事前に欠席届を提出せず平成29年度及び平成30年度のカリキュラム編成専門部会を複数回欠席したことがあったこと(理由〈3〉)、本件研究室の整理整頓を怠り、本件女性職員に対してセクシャルハラスメントを行い、学生のいるカフェテリア内で大声で叫んだことがあること(理由〈4〉)が認められ、他方、被告が本件雇止めの理由として主張するその余の事実については、認定することができない。 (3)本件けん責処分の対象となった暴力的行為については、被告も、本件けん責処分をもって終えるものとしていたのであり、また、原告は、平成29年1月頃にF教授から注意を受けた後は、業務上必要な範囲を超えて本件女性職員に接触することはなかったことが認められる。以上の事情を総合考慮すると、上記の出来事を理由に本件雇止めをすることは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとはいえないというべきである。 (4)原告の本件留学生に対する不適切な発言は、本件留学生から論文指導を求められた際に具体例を挙げて指導した場面に限られたものであって、本件全証拠を精査しても、原告が、本件厳重注意の後に、学生や留学生に対して差別的あるいは不適切な言動を繰り返したことは認められない。また、被告は、原告の本件留学生に対する不適切な発言について、軽微なもので懲戒処分を必要としないと判断したからこそ、本件厳重注意をするにとどめたものと認められる。したがって、原告が本件厳重注意を受けたことを理由に本件雇止めをすることは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとはいえないというべきである。 (5)また、原告について、オリエンテーションに複数回遅刻し、平成29年度及び平成30年度のカリキュラム編成専門部会を事前の欠席届を提出しないままに複数回欠席し、本件研究室の清掃・整理整頓を怠っていたことは認められるものの、上記遅刻によってオリエンテーションの実施に具体的な支障を生じさせたわけではなく、上記欠席によってカリキュラム編成専門部会の運営に具体的な支障を生じさせたわけではないことや、本件研究室が整理整頓されていないことによって被告やその職員に何らかの具体的支障が生じたことの主張立証もないことを考慮すると、これらだけでは本件雇止めをする客観的に合理的な理由とまではいい難く、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないというべきである。 (6)原告は、労働契約法19条2号に該当する本件労働契約の契約期間が満了する日までの間に、被告に対して本件労働契約の更新の申込みをしたことが認められるところ、被告による本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、被告は、同条柱書に基づき、本件労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で上記申込みを承諾したとみなされ。原告と被告は、平成31年4月1日以降も期間を1年とする本件労働契約が更新されたのと同様の法律関係にあることになる。 |