ID番号 | : | 09485 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | リリカラ事件 |
争点 | : | 適格性、資質の欠如による試用期間満了での解雇 |
事案概要 | : | (1)本件は、被告会社(〈1〉壁装材、カーテン、床材、襖紙その他のインテリア資材の製造、加工及び販売、〈2〉建築工事、内装工事及び建具工事の請負、〈3〉建築工事及び内装工事の設計、工事監理等を目的とする株式会社)との間で3か月間の試用期間を付した期間の定めのない雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)を締結し、エンジニアリング本部工事管理部の部長代理として勤務していた原告が、被告会社が試用期間満了日である令和2年7月14日付けで留保解約権を行使し、原告を解雇したことについて、同解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認されるものではないから、解雇権を濫用したものとして無効であると主張して、被告会社に対し、雇用契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、また、上記解雇は違法であって不法行為を構成すると主張して、不法行為に基づくき慰謝料等の支払を求める事案である。 (2)判決は、解雇権の濫用には当たらないとして、原告の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | |
体系項目 | : | 労働契約 (民事)/ 試用期間/ (2) 本採用拒否・解雇 |
裁判年月日 | : | 令和4年2月22日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和2年(ワ)21519号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約 (民事)/ 試用期間/ (2) 本採用拒否・解雇〕 (1)被告会社は、原告の職務経歴や資格を評価して原告をエンジニアリング本部工事管理部部長を補佐する部長代理のポストに、年俸約1000万円という被告会社の部長クラスの従業員に比べても高い水準の賃金で中途採用したことに照らすと、本件雇用契約において、原告は、上記職務経歴や資格を活かして、建設工事の施工管理等を関連する法令を遵守しながら適切に遂行するとともに、エンジニアリング本部工事管理部の対内的及び対外的業務が円滑に遂行されるように部長を補佐できる人材であることが期待されていたと認められる。 このような本件雇用契約において原告に期待されていた職務遂行能力や役割に照らすと、本件雇用契約において留保された解約権は、試用期間中の勤務状況等を観察し、その適格性の有無を判断して、労働者として雇い続けるか否かの最終決定権を留保する趣旨のものと解される。したがって、本件留保解約権行使の効力を判断するに当たっては、原告を試用期間経過後も雇用し続けることができないと判断することが、上記のような解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的な理由を欠くものかどうかや、社会通念上相当であると認められるかどうかを検討するのが相当である。 (2)原告は、豊富な施工管理の経験を有するなど、その職務経歴や資格等を評価され、部長代理という責任のある地位を与えられていながら、故意ではなかったとしても、被告会社の担当者に確認するなどの容易に取り得る手段を取らずに軽率にも下請代金が確定した後に下請業者に下請代金の減額を求めるという下請法に違反しかねない行為に及び、さらに、そのことを厳しく注意され、顛末書を提出するという、自らを冷静に振り返り、部長代理という責任ある立場にふさわしい言動を再考する機会を与えられていながら、その翌日には、注文主側の担当者と激しい口論に及ぶという、部長代理という責任ある立場にある者としてふさわしくないと言わざるを得ない言動に及んだものである。このような原告の言動に照らすと、被告会社が、原告に被告会社の責任ある地位に就くべき従業員としてふさわしい適格性や資質が欠如していると判断したことはやむを得ないというべきであり、被告の主張するその余の事情について検討するまでもなく、本件留保解約権行使には客観的に合理的な理由があり、社会的にも相当としてこれを是認することができると認められる。 したがって、本件留保解約権行使による解雇は、権利の濫用に当たるということはできず、有効である。そうすると、本件留保解約権行為による解雇が違法、無効であることを前提とする未払賃金請求及び不法行為に基づく損害賠償請求も、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 |