ID番号 | : | 09501 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 京都府(公務災害)事件 |
争点 | : | 公務上の疾病による休職期間中の給与支払に係る履行遅滞に基づく損害賠償請求 |
事案概要 | : | (1) 控訴人(一審原告)は、被控訴人(京都府:一審被告)の職員であるところ、うつ病により平成26年11月22日から平成29年3月31日まで休職とされ、同年4月1日に復職した後、同休職が休職者の給与に関する条例(昭和27年京都府条例第1号。本件条例)2条1項の「公務上の疾病」による休職であったとして、同条項に基づき、上記休職期間中の「給与の全額」の支払を受けることになり、平成31年1月16日、同全額と既払額との差額等の支給(本件支給)を受けたが、本件支給が支払期限(本来の給与支給日)を徒過した支払であると主張して、被控訴人に対し、履行遅滞に基づく損害賠償請求として、支給を受けた上記差額等に対する各月の支払期限の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金合計約145万円の支払を求める事案である。 原審は、控訴人の請求を棄却した。控訴人は、これを不服として、本件控訴を提起した。 (2)控訴審判決は、原判決を変更し、控訴人の主張を認め、約145万円の請求を認めた。 |
参照法条 | : | 民法415条1項 |
体系項目 | : | 賃金 (民事) /賃金の支払い原則/ (3) 全額払・相殺 |
裁判年月日 | : | 令和4年4月15日 |
裁判所名 | : | 大阪高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和3年(ネ)1460号 |
裁判結果 | : | 原判決変更 |
出典 | : | 判例地方自治503号25頁 労働法律旬報2013号62頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 上告受理申立て(後、不受理) |
評釈論文 | : | 渡辺輝人・労働法律旬報2013号46~51頁2022年8月10日 |
判決理由 | : | 〔賃金 (民事) /賃金の支払い原則/ (3) 全額払・相殺〕 (1)地方公務員の「給与」(地方公務員法24条、25条)とは、地方公務員の勤務の対価として地方公共団体から支給される金銭その他一切の有価物をいうと解され、給料のほか各種手当が給与に該当する。 地方公務員の給与は、条例で定めることとされ(同法24条5項)、被控訴人においては、職員の降任等の手続及び効果に関する条例4条2項により、休職者の給与は別に条例で定めるとされ、本件条例2条1項(注)において、職員が、公務上の疾病等により休職にされたときは、その休職の期間中、「給与の全額」を支給する旨規定された。したがって、ここにいう「給与」は、地方公務員法上における「給与」と同義に解すべきである。そして、同条項は「給与の全額」を支給するとのみ定めたものであるから、文理上、ここにいう「給与」は、給料及び各種手当を指すものと解すべきであり、労働基準法11条にいう「賃金」と同意義であると考えられる。 (注)本件条例2条1項 「職員が公務上負傷し、若しくは疾病にかかり、又は通勤(地方公務員災害補償法2条2項及び3項に規定する通勤をいう。)により負傷し、若しくは疾病にかかり、地方公務員法28条2項1号に掲げる事由に該当して休職にされたときは、その休職の期間中、これに給与の全額を支給する。」 (2) 被控訴人は、地方自治体は公務災害性の認定を行うための独自の調査・判断能力を有しておらず、基金による公務災害認定がされないうちに、公務災害であることを前提として本件条例2条1項の休職者給付を行うことは、実務上およそ考え難く、公務災害認定以前に休職者給付の履行期が到来すると考えることは不合理である旨主張する。 しかし、本件条例2条1項の文理上、休職者が休職者給付の支給を受けるために、地方公務員災害補償法に基づき、基金による公務災害認定を受けることは要件とはされていない。その支給の可否についての判断を、地方公務員災害補償法に基づく公務災害認定に係らしめる必然性はなく、基金による公務災害認定に一定の期間を要することをもって、休職者給付の支払期限が左右されるとは認められない。 以上によれば、本件条例2条1項に定められた休職者給付は、一般の職員に支給される給料及び各種手当の本来支給日を支払期限とするものと解するのが相当である。 (3)控訴人に支給された本件支給の支払期限は、各本来支給日であったところ、被控訴人は、平成31年1月16日に至って控訴人に本件支給を行ったものであるから、その支給は支払期限を徒過し、履行遅滞に陥っていたものというべきである。したがって、控訴人の主張するとおり、被控訴人は、控訴人に対し、本件支給額に対する各本来支給日の翌日以降である別紙遅延損害金計算書の「遅延損害金起算日」欄記載の日から平成31年1月16日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべきであり、その遅延損害金合計額は、上記計算書のとおり、合計145万7029円と認められる。 |