ID番号 | : | 09506 |
事件名 | : | 残業代支払等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | テイケイ事件 |
争点 | : | 業務報告の労働時間性 |
事案概要 | : | (1)本件は、身辺警備請負業、建物警備請負業、貴重品・重要書類等の護送業務等を業務内容とする株式会社である被告と労働契約を締結し警備業務に従事していた原告が、毎週水曜日に支社に赴き、勤務実績報告書を提出したり、制服等の点検を受けたりしていた(以下、原告が本社に赴いて行った行為を併せて「本件業務報告等」という。)の時間が時間外労働に該当するとして、これに対する割増賃金及び自宅から支社に赴く際の交通費の不払がある旨主張して、労働契約及び労働基準法(以下「労基法」という。)37条1項に基づき、割増賃金、付加金等及び交通費等の支払を求める事案である。 (2)判決は、本件業務報告等の時間は労働時間であるとして、割増賃金の未払とその半額に当たる付加金等の支払を認容したが、交通費については雇用契約の内容になっていないとして棄却した。 |
参照法条 | : | 労働基準法 37条 |
体系項目 | : | 労働時間 (民事)/ 労働時間の概念 |
裁判年月日 | : | 令和4年6月1日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和1年(ワ)34847号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働経済判例速報2502号28頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働時間 (民事)/ 労働時間の概念〕 (1)被告が作成した警備業務にかかる待遇や勤務内容について記載された書面(以下「本件書面」という。)には、警備員には、週に1度、水曜日に会社に来てもらい、勤務希望表及び勤務報告書の提出、給料明細の受取り、制服の点検等を行う旨記載されていること、原告は現場における業務がない日もわざわざ自宅から本件支社に赴いて本件業務報告等を行っていることを踏まえると、本件業務報告等は、被告の明示又は黙示の指示により行った業務というべきであり、これに要した時間は労働時間に該当するというべきである。 被告は、警備員に対し、勤務実績報告書を本件支社に持参することを義務付けておらず、郵送やファクシミリにより行うことも可能であった旨主張し、郵送での提出が認められたことがあることを示す証拠を提出している。しかしながら、勤務実績報告書の提出自体は業務命令であることは明らかであるし、警備員の本件業務報告等の対応を行っていたC課長は、警備員の7割程度は勤務実績報告書を本件支社に持参していたにもかかわらず、持参する警備員に対し、郵送やファクシミリでの対応が可能であることを明確に指示していたとはうかがわれないのであるから、例外が認められる場合はあるにせよ、原則としては本件支社に勤務実績報告書を持参することを求めていたというべきであって、勤務実績報告書の提出に要した時間は、被告の指示により業務を行った時間というべきである。 本件書面には、会社に来てもらい制服の点検を行う旨明示されているのであるから、制服等の点検に要した時間は、被告の指示により業務を行った時間というべきである。 本件業務報告等を行っていた時間は、労働時間に該当するというべきである。 (2)原告は、自宅から本件支社に赴く際の交通費の支払が本件雇用契約の内容になっている旨主張するが、本件給与規程8条2項は、「交通誘導警備業務に従事する準社員の通勤手当は原則として支給しない。」旨規定しており、本件契約書にも交通費に関する定めはなく、本件書面にも、自宅から勤務地の往復交通費のみが支給され、水曜日に来社する際の交通費の支給はない旨記載されているのであるから、自宅から本件支社に赴くための交通費の支払が本件雇用契約の内容になっていたとはいえない。 (3)被告は、労使間の団体交渉等を踏まえ、本件業務報告等が行われた場合に実績支援手当として500円を支払っており、これは割増賃金の支払としては認められないものの、移動時間を除く本件業務報告等そのものに要する労働時間の長さに照らして相応の金額であるといえ、原告に対しても本件請求期間の約3分の1にあたる期間について実績支援手当が支払われているのであるから、違反の態様が著しく悪質であるとはいえない。これに加え、本件に現れた一切の事情を考慮すると、付加金については、「法外残業割増手当額」の合計額(5万7456円)の5割である2万8728円の支払を命じるのが相当である。 |