ID番号 | : | 09509 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 関西新幹線サービックほか事件 |
争点 | : | 新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における出勤命令の違法性 |
事案概要 | : | (1)本件は、新幹線車両の清掃整備業務等を行う被告会社に勤務し、新幹線車内の清掃及び簡易な修繕業務に従事していた原告X1及び原告X2(以下、併せて「原告ら」ともいう。)が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により自宅待機を命じられた際、休業又は有給休暇として取り扱われるはずであるにもかかわらず、課題の作成及び提出を求められ、原告らがこれを提出しなかったところ、自宅待機が命じられるべき日に出勤を命じられ、不必要に新型コロナウイルス感染症への感染の危険にさらされたなどと主張して、前記出勤命令を不法行為として、被告会社、原告らの勤務していた事業場の所長であった被告Y1及びE科長等であった被告Y2に対し、民法709条(対被告Y1、被告Y2)及び715条(対被告会社)に基づき、原告X1につき慰謝料100万円、原告X2につき慰謝料175万円等の連帯支払を求める事案である。 (2)判決は、原告らの請求をいずれも棄却した。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法715条 |
体系項目 | : | 労働契約 (民事) /労働契約上の権利義務/ (4) 業務命令 |
裁判年月日 | : | 令和4年6月23日 |
裁判所名 | : | 大阪地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和2年(ワ)7219号 /令和3年(ワ)6497号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1282号48頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約 (民事) /労働契約上の権利義務/ (4) 業務命令〕 (1)被告会社が従業員に対して一定の業務への従事を指示することが、他の従業員との間で不利益な取扱いをするものとして、不法行為上、違法性を有するのは、被告会社が一定の業務への従事を指示することによって裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと評価されることを要するものと解するのが相当であり、この判断に当たっては、〈1〉当該業務指示に係る業務上の必要性、〈2〉当該業務に従事することによって当該従業員に生ずる不利益の程度、〈3〉従業員間における業務内容に関する負担の相違の有無、程度及び合理性といった観点から検討するのが相当である。 (2)本件事業所では、自宅待機者を選定するに当たって、課題を提出した者を優先する運用(本件運用)をしていたことが認められる。原告らは、令和2年4月から5月までの間、自宅待機を命じられることがあったが、その間、課題を提出しなかったところ、本件指定変更日の各日、本件文書上は自宅待機となる見込みの勤務が指定されていたにもかかわらず、その発出後に出勤を要する別の勤務を指定する本件出勤指示がされたことが認められる。以上によれば、本件出勤指示は、いずれも原告らが課題を提出しなかったことによってされたものと認めるのが相当である。 本件出勤指示は、被告会社の業務上の必要に基づくものであり、従業員に対して特別に重い負担や不利益を課すものでもなく、自宅待機を命じられた従業員との比較において、業務上の負荷の程度に一定の相違を生じさせるものではあるとしても、相違の原因となった本件運用には合理的理由があり、負荷の相違の程度や内容等に照らして従業員間の公平を害するということもできない。よって、本件出勤指示が、被告会社の業務内容の指定に関する裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものとはいえず、不法行為上、違法性があるとは認められない。 |