| ID番号 | : | 09581 |
| 事件名 | : | 損害賠償等請求控訴事件 |
| いわゆる事件名 | : | 山口放送事件 |
| 争点 | : | 退任取締役の退職金慰労金不支給に対する損害賠償 |
| 事案概要 | : | (1)本件は、被控訴人山口放送株式会社(以下「被控訴人会社」という。)の被控訴人会社の代表取締役である被控訴人Y(以下「被控訴人Y」という。)が、令和2年5月上旬頃、被控訴人会社の取締役である控訴人に対し、今期をもって取締役を退任してもらう旨を内示したところ、控訴人が同年6月、フリーライター1名に対し、被控訴人会社において、平成9年及び平成11年の調査において、実際は被控訴人会社のCM放送に不正があったにもかかわらず、これを隠した調査結果を報告したなどとするメールを送信した上、CM放送に関する資料等を送付し、また公益社団法人日本アドバタイザーズ協会(以下「アド協」という。)及び株式会社中国新聞社に対し他社のCM放送の不正に関する問題に絡み、被控訴人会社にも同様の不正が存在したが、被控訴人会社は、平成11年の全国調査を前にデータを修正して上記不正を隠ぺいしたとして、これに関する資料等を送付した(本件告発)。被控訴人会社は、控訴人が本件告発をしたことを認知し、本件告発は取締役の忠実義務に反する行為であり容認できないと判断し、被控訴人会社は、本件株主総会において、控訴人に対する退職慰労金の支給決議を否決する方針とし、令和2年6月26日に開催された被控訴人会社の株主総会(以下「本件株主総会」という。)において、控訴人に対して退職慰労金を支給する旨の議案が否決された(以下「本件決議」という。)。このことに関し、控訴人が、 〈1〉主位的に、被控訴人Yが、本件株主総会において、株主に対して委任の趣旨に反する議決権行使をさせた上、議事運営を著しく不当に行ったなどとして、被控訴人Yに対しては会社法429条1項又は民法709条に基づき、被控訴人会社に対しては会社法350条又は民法715条に基づき、連帯して、損害金2079万円等の支払を求め、 〈2〉予備的に、本件決議が公序良俗に反するから、控訴人には被控訴人会社の役員退職慰労金規程(以下「本件規程」という。)に従った退職慰労金支払請求権があるとして、被控訴人会社に対し、本件規程に基づき、退職慰労金1890万円等の支払を求める事案である。 (2)原判決(山口地裁周南支部)は、控訴人の請求はいずれも理由がないとして棄却した。これを不服として、控訴人が控訴した。 (3)判決は、被控訴人らの一連の対応は、控訴人の退職金慰労金支給に関する法律上保護される期待を違法に侵害し、不法行為を構成するものと解さざるを得ないとして、原判決を取り消し控訴人の損害賠償請求を認容した。 |
| 参照法条 | : | 民法709条 会社法350条 |
| 体系項目 | : | 賃金 (民事)/ 退職金/ (8) 退職慰労金 |
| 裁判年月日 | : | 令和5年11月17日 |
| 裁判所名 | : | 広島高裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和5年(ネ)120号 |
| 裁判結果 | : | 原判決取消自判 |
| 出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
| 審級関係 | : | |
| 評釈論文 | : | 尾形祥・ジュリスト1595号2~3頁2024年4月 小柿徳武・月刊法学教室527号110頁2024年8月 |
| 判決理由 | : | 〔賃金 (民事)/ 退職金/ (8) 退職慰労金〕 (1)被控訴人会社においては、役員退職慰労金規程(本件規程)により退職慰労金の算出方法が定められ、株主総会で支給決議がされたときの金額が明確になっていることに加え、本件決議に至るまで、株主総会で同種議案が否決されたことはなく、本件株主総会においても、退任取締役3名のうち控訴人を除く取締役2名については退職慰労金支給の議案が可決承認されていること、本件株主総会で大多数の議決権行使を事実上被控訴人会社に委ねる委任状が株主から提出されていたことを踏まえると、控訴人の退職慰労金支給を受けられるとの期待は、法律上保護に値する利益を有するに至っていたというべきである。 (2)控訴人がCM放送に関する不正問題を指摘したことに不合理な点はなく、本件告発が社会通念からみて相当な範囲を逸脱するような方法でされたとも認められないから、控訴人が本件告発に及んだことが取締役としての忠実義務ないし善管注意義務に反するものということはできない。 控訴人がCM放送に関する不正の問題を指摘し、本件告発に及んだことが取締役としての忠実義務ないし善管注意義務に違反するとは評価できないにもかかわらず、被控訴人らは、控訴人の指摘を無視して調査することもなく、控訴人に対する事情聴取や弁明の機会も設けず、本件告発を忠実義務に反するものと一方的に断定し、本件株主総会で実質的な審議をすることを敢えてせず、被控訴人らが大多数の議決権を事実上行使できる状況を利用して、強引に本件決議を成立させたものというほかなく、その一連の対応は、本件告発への報復ないし制裁というべきであって、控訴人の退職金慰労金支給に関する法律上保護される期待を違法に侵害し、不法行為を構成するものと解さざるを得ない。そして、被控訴人Yは、被控訴人会社の代表取締役会長で、本件株主総会の議長でもあり、被控訴人会社の一連の対応の方針決定及び実行で主要な役割を果たした者であると認められる。 以上によれば、被控訴人Yは民法709条に基づき、被控訴人会社は会社法350条に基づき、控訴人に対して損害賠償責任を負うというべきである。 (3)本件規程によれば、控訴人が退職慰労金として支給される予定であった金額は1890万円であり、同額が控訴人の損害であると認められる。そして、本件訴訟の内容及び認容額等に照らすと、被控訴人らの不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用は189万円とするのが相当である。 よって、被控訴人Y及び被控訴人会社は、控訴人に対し、連帯して2079万円の支払義務がある。 |