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ID番号 09582
事件名 違約金請求事件(本訴)(10940号)、賃金等請求事件(反訴)(2611号)
いわゆる事件名 ファーストシンク事件
争点 専属マネジメント契約の労働契約か否かと違約金条項の違法性
事案概要 (1)本件本訴は、アーティスト、タレントの育成、マネジメント、イベントの企画、運営等を業とする株式会社である原告(株式会社ファーストシンク)が、被告(芸能活動を行う個人であり、原告が専属的にマネジメント及びプロデュースする男性アイドルグループ「BREAK THROUGH」(以下「ブレイクスルー」という。)のメンバー)に対し、被告との間で専属マネジメント契約を締結し、被告が同契約上の義務違反を五回したとして、被告がブレイクスルーを脱退した後に、違約金1000万円から未払報酬11万円を控除した989万円等の支払を求めた事案である。
 本件反訴は、被告が、原告に対し、上記専属マネジメント契約が労働契約であるとして、未払賃金11万円等の支払を求めた事案である。
(2)判決は、上記専属マネジメント契約は労働契約であるとして、原告の本訴請求は棄却し、被告の反訴請求を認容した。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法16条
体系項目 労基法の基本原則 (民事) /労働者/(13) 演奏楽団員・オペラ歌手、タレント
裁判年月日 令和5年4月21日
裁判所名 大阪地裁
裁判形式 判決
事件番号 令和2年(ワ)10940号 /令和3年(ワ)2611号
裁判結果 認容(2611号)、棄却(10940号)
出典 判例タイムズ1514号176頁
労働判例1310号107頁
労働法律旬報2036号61頁
D1-Law.com判例体系
審級関係 控訴
評釈論文 細川良・労働法律旬報 2036号24~25頁2023年7月25日
小西康之・ジュリスト 1586号4~5頁2023年7月
河津博史・銀行法務21 68巻2号70頁2024年2月
山手貴文・経営法曹 220号42~52頁2024年6月
平井孝典・経営法曹 223号29~44頁2025年3月
判決理由 〔労基法の基本原則 (民事) /労働者/(13) 演奏楽団員・オペラ歌手、タレント〕
(1)本件では、本件違約金条項の有効性が争われているため、被告による本件契約違反の有無(争点1)に先立ち本件違約金条項が労働基準法16条に違反して無効であるか(被告の労働者性)(争点2)につき判断する。そして、労働基準法における労働者に該当するかについては、契約の形式ではなく、実質的な使用従属性の有無に基づいて判断されることになるから、以下、検討する。
(2)指揮監督下の労働か否か
〈1〉仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由
 被告は、A(原告代表者の友人であり、原告の役員でも従業員でもないものの、ブレイクスルーの活動に関与しており、ブレイクスルーのメンバーからは、「A社長」という呼称で呼ばれていた者)の指示どおりに業務を遂行しなければ、一回につき違約金200万円を支払わされるという意識のもとで、タイムツリーに記入された仕事を遂行していたものであるから、これについて諾否の自由があったとは認められない。
〈2〉業務遂行上の指揮監督の有無
 原告は、Aに委任して、ブレイクスルーの芸能活動がうまくいくように、Aが仕事を取ってきて、ブレイクスルーのメンバーに対して、主にB(原告代表者の息子であり、ブレイクスルーのメンバーとして芸能活動をしている者)を通じて、仕事のスケジューリングを決めて、ある程度、時間的にも場所的にも拘束した上、Bを通じて又は直接、その活動内容について具体的な指示を与えており、その指示に従わなければ、違約金を支払わされるという状況にあったから、原告の被告に対する指揮監督があったものと認められる。 〈3〉拘束性の有無
 Aが取ってきた仕事を中心にそれに合わせてスケジューリングを組んでおり、そのとおりの行動を要請されていたものであるから、その限度において、原告による被告の時間的場所的拘束性もあったと認められる。
〈4〉代替性の有無
 被告は、アイドルグループのメンバーとして芸能活動をしていたものであるから、労務提供に代替性はない。
 以上のとおり、被告は、原告の指揮監督の下、ある程度の時間的場所的拘束を受けつつ業務内容について諾否の自由のないまま、定められた業務を提供していたものであるから、原告の指揮監督下の労務の提供であったと認められる。
(3)報酬の労務対償性
 被告は、原告から報酬を月額で定額支払われており、ブレイクスルー加入当初低かった月額が、在籍期間が長くなるにつれて漸次増額されているものである。
 そうすると、週に一日程度の休日を与えるほかは、あらかじめスケジューリングをして、時間的にも場所的にもある程度拘束しながら、労務を提供させていたものであるから、その労務の対償として固定給を支払っていたものと認めるのが相当である。
(4)使用従属性を肯定する補強要素
 報酬から諸経費を控除すると赤字になることから、実質的な負担は原告がしていたこと、交通費等は、本件契約上も原告の負担であったこと、被告の芸能活動により生じた諸権利が原告に帰属すること、本件契約上では、副業、アルバイト等は原告に事前に届け出ることにより就業することができるとされているものの、実際には、アルバイト等をすることはスケジュール的に困難であったこと、被告には固定給が支払われており、生活保障的な要素が強かったことなども使用従属性を肯定する補強要素となる
(5)以上によれば、被告は、原告の指揮監督の下、時間的場所的拘束を受けつつ業務内容について諾否の自由のないまま、定められた業務を提供しており、その労務に対する対償として給与の支払を受けており、被告の事業者性も弱く、被告の原告への専従性の程度も強いものと認められるから、被告の原告への使用従属性が肯定され、被告の労働者性が認められる。
 したがって、本件違約金条項は、労働基準法16条に違反して無効である。