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ID番号 09589
事件名 行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件
いわゆる事件名 国・人事院(経済産業省職員)事件
争点 性同一性障害である職員に対するトイレ使用制限等の違法性
事案概要 (1)トランスジェンダー(Male to Female)であり、国家公務員である一審原告(以下「上告人」という。)が、その所属する経済産業省(以下「経産省」という。)において女性用トイレの使用に関する制限を設けないこと等、人事院に対して勤務条件に関する行政措置を要求したが、いずれの要求も認められないとの判定(以下「本件判定」という。)を受けたことから、本件判定がいずれも違法であるとして、本件判定に係る処分の取消しを求めるとともに(第一事件)、女性用トイレの使用制限を受けていること等に関し、経産省の職員らがその職務上尽くすべき注意義務を怠ったことにより損害を被ったものと主張して、国(以下「被上告人」という。)に対し、慰謝料等の支払を求めた(第二事件)事案である。
(2)一審判決(東京地裁)は、経産省が上告人に対して女性用トイレの使用を認めない処遇を継続したことは、その裁量権の範囲を逸脱し、又はその濫用があったものとして、違法であるから取消しを免れないとし、経産省の職員らによる上告人に対する発言等の一部については、国家賠償法上、違法の評価を免れないとして原告の損害賠償請求のうち慰謝料の支払いを命じた。これに対し、上告人、被上告人がこれを不服としてそれぞれ控訴した。なお、上告人は、当審において、A調査官が上告人のプライバシー情報を暴露したと主張して、慰謝料請求額を50万円増額し、全体の請求額を1702万6219円に拡張した。
(3)原判決(東京高裁)は、一審判決を変更して、第1事件に係る上告人の請求を棄却し、第2事件に係る被上告人に対する請求を11万円及び遅延損害金の支払を認める限度でこれを認容し、それ以外の上告人の請求等を棄却した。これを不服として、上告がされた。
(4)最高裁判決は、原判決中、本件判定のうちトイレの使用に係る要求に関する部分(以下「本件判定部分」という。)の取消請求に関する部分は破棄を免れないとして、これを認容した第1審判決は正当であるから、上記部分につき被上告人の控訴を棄却すべきであるとして、上告人の請求を認容した。
 なお、上告人のその余の上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたため棄却した。
参照法条 日本国憲法14条
国家公務員法55条
国家公務員法58条
国家公務員法86条
国家公務員法87条
国家公務員法98条
国家賠償法1条
事務所衛生基準規則
、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律2条
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条
体系項目 労基法の基本原則 (民事)/国に対する損害賠償請求
労基法の基本原則(民事)/均等待遇/セクシャル・ハラスメント
裁判年月日 令和5年7月11日
裁判所名 最三小
裁判形式 判決
事件番号 令和3年(行ヒ)285号
裁判結果 一部破棄、一部棄却
出典 最高裁判所民事判例集77巻5号1171頁
判例時報2594号59頁
判例タイムズ1516号51頁
労働判例1297号68頁
労働経済判例速報2525号3頁
家庭の法と裁判48号35頁
労働法律旬報2049号61頁
裁判所ウェブサイト掲載判例
審級関係
評釈論文 竹内(奥野)寿・ジュリスト1588号4~5頁2023年9月
柳田忍・Profession Journal531号2023年8月17日
小國隆輔・判例地方自治501号90~92頁2023年9月
井上美帆・NBL1251号63~73頁2023年10月1日
井川志郎・法学セミナー68巻11号114~115頁2023年11月
岩出誠・会社法務A2Z198号36~41頁2023年11月
安達敏男、吉川樹士・戸籍時報844号32~36頁2023年10月
岡田正則・月刊法学教室518号58~63頁2023年11月
飯島淳子・月刊法学教室518号114頁2023年11月
富永晃一・ジュリスト1591号94~101頁2023年12月
平越格・労働経済判例速報2525号2頁2023年10月10日
三輪晃義・月刊大阪弁護士会830号46~47頁2023年11月
早川学・ビジネス法務23巻12号50~54頁2023年12月
永野靖・季刊労働者の権利353号78~82頁2023年10月
鈴木蔵人、今津幸子、木下潮音、沢崎敦一、斉藤芳朗、和田一郎、松下守男・経営法曹218号137~165頁2023年12月
宮端謙一・ジュリスト1593号86~90頁2024年2月
吉原秀・月刊大阪弁護士会831号59~62頁2023年12月
二宮周平・戸籍時報849号2~9頁2024年2月
青木洋英・白門〔中央大学〕75号冬(857)85~90頁2024年1月
山崎文夫(労働判例研究会)・法律時報96巻4号142~145頁2024年4月
長谷川聡・季刊労働法284号12~21頁2024年3月
村松頼信・ビジネス法務24巻4号92~93頁2024年4月
松崎勝・市政73巻3号52~55頁2024年3月
立石結夏・判例時報2594号5~11頁2024年8月1日
岡田正則・判例時報2594号12~18頁2024年8月1日
飯島淳子・民商法雑誌160巻3号113~126頁2024年8月
判決理由 〔労基法の基本原則 (民事)/国に対する損害賠償請求〕
〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇/セクシャル・ハラスメント〕
1 遅くとも本件判定時においては、上告人が本件庁舎内の女性トイレを自由に使用することについて、トラブルが生ずることは想定し難く、特段の配慮をすべき他の職員の存在が確認されてもいなかったのであり、上告人に対し、本件処遇による上記のような不利益を甘受させるだけの具体的な事情は見当たらなかったというべきである。そうすると、本件判定部分に係る人事院の判断は、本件における具体的な事情を踏まえることなく他の職員に対する配慮を過度に重視し、上告人の不利益を不当に軽視するものであって、関係者の公平並びに上告人を含む職員の能率の発揮及び増進の見地から判断しなかったものとして、著しく妥当性を欠いたものといわざるを得ない。
 したがって、本件判定部分は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるというべきである。
2 本件判決には、裁判官宇賀克也、同長嶺安政、同渡邉惠理子、同林道晴、同今崎幸彦の各補足意見があり、そのうちの裁判官今崎幸彦の補足意見では、「本判決は、トイレを含め、不特定又は多数の人々の使用が想定されている公共施設の使用の在り方について触れるものではない。この問題は、機会を改めて議論されるべきである。」とされている。