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ID番号 09596
事件名 労働契約上の地位確認請求事件
いわゆる事件名 学校法人コングレガシオン・ド・ノートルダムほか(明治学園)事件
争点 配転の有効性と法人の承継に伴う労働契約の存否
事案概要 (1)本件は、被告Y1が設置、運営していたY2学園中学校・高等学校(以下「本件学校」といい、Y2学園小学校と併せて「本件学校等」という。)において数学科教員として勤務していた原告が、被告Y1からC市所在のB学院中学校・高等学校(以下「B学院」という。)への配転命令を受けたことにつき、同命令は無効であると主張して、被告Y1に対し、B学院での就労義務がないことの確認(〈1〉事件)を求めるとともに、本件学校の設置者が被告Y1から、新設された被告Y2学園へ変更されたことに伴い、原告の労働契約上の権利関係が被告Y1から被告Y2学園に承継されたと主張して、被告Y2学園に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及びB学院での就労義務がないことの確認(〈2〉事件)を求めた事案である。
 なお、本件に先立って、被告Y1は、平成29年8月22日付けで、原告に対する解雇の意思表示(以下「本件解雇」という。)をしたため、原告は、本件解雇が無効であるとして、福岡地方裁判所小倉支部に労働契約上の権利を有する地位の確認等を求める訴訟を提起している。同裁判所は、本件解雇は有効であるとして、原告の労働契約上の権利を有する地位の確認等の請求を棄却する判決をしたが、控訴審において、福岡高等裁判所は、令和2年8月27日、本件解雇が無効であると認定した上、原告が被告Y1に対して労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、本件解雇の翌月以降の賃金の支払を命じる判決(以下「前件控訴審判決」という。)を言い渡した。これに対し、被告Y1は、前件控訴審判決に対して上告受理申立てをしたが、最高裁判所は、令和3年1月19日、上告を受理しない決定をしている。
(2)判決は、原告の〈1〉事件に係る請求は認容し、〈2〉事件に係る訴えのうち、被告Y2学園に対して労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める請求は認容し、被告Y2学園に対してB学院での就労義務がないことの確認を求める訴えについては不適法であるとして却下した。
参照法条 労働契約法3条5項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣/3 配転命令権の濫用
労働契約 (民事)/ 5 労働契約の承継
裁判年月日 令和5年9月19日
裁判所名 福岡地裁小倉支部
裁判形式 判決
事件番号 令和4年(ワ)22号 /令和5年(ワ)435号
裁判結果 認容(22号)、一部認容、一部却下(435号)
出典 労働判例1313号54頁
労働経済判例速報2538号21頁
D1-Law.com判例体系
審級関係 控訴(令和6年3月21日福岡高判 控訴一部却下、一部棄却)
評釈論文 水町勇一郎・ジュリスト 1591号4~5頁2023年12月
梶原恒夫・季刊労働者の権利 354号117~122頁2024年1月
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣/3 配転命令権の濫用〕
(1)原告は、20年以上にわたって本件学校で数学教員として勤務してきたところ、被告Y1から本件解雇を通知され、本件学校から排除され、本件解雇が無効である旨の前件控訴審判決が確定し本件学校に復帰すべき状況が明らかになったにもかかわらず、その後も約9か月間にわたり、本件学校に復帰させてもらえず、本件学校への敷地内への立入りすら禁じられた状態が継続し、これまでシスターを除く一般の教職員が本件学校からB学院へ異動となった例はうかがわれない中で、異動についての何らの意向の聴取等も行われずに本件配転命令を受けるに至ったという一連の経過及び本件配転命令の業務上の必要性はないとはいえない程度にとどまることに照らせば、本件配転命令が、業務上の必要性とは異なる、不当な動機・目的をもってなされたことが強く疑われる上、原告に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものといわざるを得ない。
 以上の点に鑑みれば、本件配転命令は、権利を濫用したものとして無効となるというべきである。
〔労働契約 (民事)/ 5 労働契約の承継〕
(2)原告のB学院での就労義務の存否については、基本的には、B学院の設置者である被告Y1に対して確認すれば足りるものであり、被告Y1とは別に、被告Y2学園との関係で、上記就労義務の存否を確認すべき事情は見当たらないから、被告Y2学園に対するB学院での就労義務不存在確認の訴えについては、確認の利益がなく、不適法というべきである。
(3)被告Y1は、本件学校等の設置者を新設する被告Y2学園に引き継がせるに当たって、令和5年3月31日時点で本件学校等の部門に属する一切の資産、負債、雇用契約及びその他の権利義務を被告Y2学園に移管・譲渡することを承認、決議していること、被告Y2学園が本件学校等の設置者として福岡県知事から寄付行為の認可を受け、これらの学校を現に運営していることからすれば、被告Y1と被告Y2学園との間で、上記の決議内容に従い、上記時点における本件学校等の部門の一切の権利義務を譲渡する旨の合意がされたことが推認される。そして、前記のとおり、本件配転命令は権利の濫用として無効であるというべきであり、これにより、原告は上記時点で本件学校等の部門に属する教職員であったことになるから、本件学校等の他の教職員と同様に、その労働契約上の権利関係は被告Y1から被告Y2学園へ承継されたものと解するのが相当である。
 以上によれば、原告の労働契約上の権利が被告Y1から被告Y2学園に移転し、原告は、現時点において、被告Y2学園の従業員たる地位を有していると認められる。