| ID番号 | : | 09599 |
| 事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
| いわゆる事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
| 争点 | : | 退職勧奨に応じない者に対する差別的取扱いの違法性 |
| 事案概要 | : | (1)本件は、美術品・骨董品・酒類の競り売りの企画及び開催等を目的とする株式会社であり、世界的なオークション会社のグループであるAの日本法人である被告との間で労働契約を締結し、当初、西洋美術部門のクライアントサービス・コーディネーター(以下「CSC」という。)として入社した原告が、被告が行った令和3年9月28日付けの解雇は無効である等と主張して、被告に対して、次の各請求をする事案である。 ①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認 ②当該解雇の日以降に原告が就労しなかったのは被告の責めに帰すべき事由によるものであると主張して、未払賃金等の支払 ③被告が行った退職勧奨、オフィスアシスタントへの配置転換、肉体的・精神的苦痛を与える業務命令及び他の労働者からの切り離し、差別的取り扱い等は不法行為を構成し又は労働契約上の債務不履行を構成すると主張して、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償等の支払 (2)判決は、請求①②については解雇は有効であるとし棄却し、請求③については被告に不法行為があったとして損害賠償等を認容した。 |
| 参照法条 | : | |
| 体系項目 | : | 退職/ 5 退職勧奨 |
| 裁判年月日 | : | 令和5年10月25日 |
| 裁判所名 | : | 東京地裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和4年(ワ)4693号 |
| 裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
| 出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
| 審級関係 | : | |
| 評釈論文 | : | |
| 判決理由 | : | 〔退職/ 5 退職勧奨〕 (1)本件では、就業規則14条2号(勤務成績・態度が不良で改善の見込みのない場合)、3号(職務能力を欠き他の職務に転換できないと認められる場合)及び7号(その他前各号に準ずる事由がある場合)に該当する事由があるかが問題となるところ、解雇は使用者と労働者との間の雇用契約を終了させ、それ以後の賃金を得られなくする点で重大な不利益をもたらすものであることから、そのような不利益を正当化するだけのやむを得ない事情が必要であると解すべきである。したがって、単に単発の出来事として、勤務成績・態度が不良と評価される言動、職務能力を欠くと評価される言動があるのみでは同号に該当するとはいえず、そのような出来事が複数回繰り返され、これについての注意、指導がされたにもかかわらず、そのような言動が改善しない場合に限って、同号に該当し、解雇が可能となるというべきである。 (2)原告は、雇用された当初から、〈1〉西洋美術部門の事務(原告が関心のない業務を含む)の遂行に積極的に関与していない、〈2〉チームの一員として働くことができず、他の従業員とのコミュニケーションを通じてチームワークを促進することができていない、〈3〉割り当てられた時間内に効率的かつ迅速な事務処理を行っていないとの問題点があり、本件注意書等及びこれに伴う面談の際に被告代表者から具体的に指摘されたにもかかわらず改善しなかったというべきである。 以上によれば、被告が主張するほかの解雇事由について判断するまでもなく、原告は勤務成績・態度が不良で改善の見込みがない、職務能力を欠き他の職務に転換できない状態にあったというべきであって、原告には就業規則14条2号及び3号に該当する解雇事由があったと認められる。さらに、本件注意書1、2において指導を受け、オフィスアシスタントに配置転換された後においても、原告の問題点は解消されなかったのであるから、被告が解雇を選択したことが相当性を欠くとまではいえない。 したがって、原告が試用期間満了後に本採用されていること及びその後に昇給をしていることを考慮しても、本件解雇は有効であるといえる。 (3)原告にとっては書籍の移動作業は肉体的な負担がかかる作業であり、これにより原告は腰痛症を発症したことが認められる。そのような中で、J氏(被告のオフィス・マネージャー。経理、総務、人事等を担当)は、原告から令和2年3月3日に作業軽減の申出を受けた際に、5階の残りは自分がやる旨を申し出たものの、同月8日以降はより重い書籍が存在する中二階の書籍の箱詰め作業を行わせ、同月22日までアルバイト従業員に手伝わせず、結果として原告が腰痛症を発症しているのであるから、J氏の対応は、原告からの作業軽減の申出に対する対応としては原告への配慮を著しく欠くものといわざるを得ない。したがって、J氏の言動は労働者が身体等の安全を確保しながら労働することができる法的な利益を侵害したものとして不法行為を構成するというべきである。 上記の行為が行われた態様に加え、原告が現に腰痛症と診断されていることを考慮すると、これによる慰謝料は10万円とするのが相当であり、弁護士費用は1万円とするのが相当である。 (4)〈1〉朝の定例会では、顧客に関する情報以外の情報も話題に上っており、被告の他の従業員(正社員)は全員出席している中で、情報共有の場として原告に出席を禁止するまでの必要性があったとまではいえないこと、〈2〉Mシステムに関しては原告の職務内容に明確に含まれているとともに、Nシステム及び共有サーバーへのアクセスについても、被告代表者は秘密漏洩の可能性を感じたものの、何か具体的な兆候があったわけではない旨供述しているのに対し、現に原告は令和3年1月27日にB氏から命じられた翻訳業務に関して、共有サーバーで自ら参考となる資料を探そうとしても、これができない旨を表明しており、従業員(正社員)の中で原告のみをアクセスできなくする必要性が乏しいこと、〈3〉勉強会についても、社内のカレンダーに記載され、原告を除く被告の従業員(正社員)すべてに案内されているものであり、従業員(正社員)の中で原告のみ参加を禁止する必要性に乏しいことからすると、これらの一連の行為は、原告のみを被告の社内で孤立させ人間関係から切り離す目的で行われたと認められる。そうすると、原告に解雇事由に該当する事実があったことを考慮しても、これらの行為は原告の職務環境を意図的に悪化させるものであり、良好な環境で就労する原告の法的な利益を侵害するものであって、不法行為を構成するというべきである。 これらの行為が行われた態様、期間等を考慮すると、これによる慰謝料は30万円とするのが相当であり、弁護士費用は3万円とするのが相当である。 |