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ID番号 09603
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 日本郵便事件
争点 制服の更衣に要する時間の労働時間性
事案概要 (1)本件は、被告(日本郵便株式会社)の従業員である原告ら(ただし、原告X2は被告の従業員ではなく、その子であるBが被告の従業員である。)が、被告から着用を義務付けられていた制服の更衣に要する時間は労働基準法上の労働時間に該当するにもかかわらず、被告はこれを労働時間として扱わず、更衣に要する時間に応じた割増賃金を支払っていない旨主張して、被告に対し、〈1〉〈ア〉主位的に、平成29年12月から令和2年11月までの間の不法行為に基づく損害賠償請求として未払賃金相当損害金等の支払を求め、〈イ〉予備的に、(a)雇用契約に基づく賃金請求として、令和元年7月から令和2年11月までの間の未払賃金等の支払を求めるとともに、(b)労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求め、また、〈2〉雇用契約に基づく賃金請求として、令和2年12月から令和4年3月までの間の未払賃金等の支払を求める事案である。
(2)判決は、更衣に要する時間は、労働時間に該当すると認めるのが相当であるとして、未払賃金及び付加金の請求を認容した。
参照法条 労働基準法32条
労働基準法37条
労働基準法114条
体系項目 労働時間 (民事)/ 労働時間の概念/ (1) 着替え、保護具・保護帽の着脱
裁判年月日 令和5年12月22日
裁判所名 神戸地裁
裁判形式 判決
事件番号 令和3年(ワ)609号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働経済判例速報2546号16頁
D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間 (民事)/ 労働時間の概念/ (1) 着替え、保護具・保護帽の着脱〕
(1)原告従業員らについては、被告での就業に当たって制服を着用することが、就業規則上も、勤務実態としても、義務付けられていたことが認められる。
 制服を着用して通勤していることが確認できるのは、調査対象者のうちのごく一部であり、これらの郵便局においては、ほとんどの従業員が、各郵便局内に設置された更衣室で更衣を行っているのが実態であるということができる。
(2)被告がユニフォームを着用しての通勤を禁止していたことを窺わせる被告作成の資料があるほか、ほとんどの従業員が、各郵便局内に設置された更衣室で更衣を行っていたという実態がある一方で、被告からユニフォームを着用しての通勤が許される旨の告知がされたことはないのであるから、被告は、各郵便局内の更衣室において、制服を更衣するよう義務付けていたものと認めるのが相当である。
(3)実態として制服を着用して通勤している者がいることが認められるが、これまでに摘示した事情に鑑みれば、これらの者は、各郵便局内の更衣室で更衣すべきであるという被告の義務付けに反して制服を着用して通勤しているとみるのが相当であり、制服を着用して通勤している者が一部存在するという事情をもって、被告が制服を着用しての通勤を許容していたと認めることはできない。
 したがって、被告は、原告従業員らに対し、制服の更衣を各郵便局内の更衣室で行うべきよう義務付けていたものと認められる。
(4)以上によれば、原告従業員らは、被告から、制服を着用するよう義務付けられ、かつ、その更衣を事業所である各郵便局内の更衣室において行うものと義務付けられていたのであるから、制服の更衣に係る行為は、被告の指揮監督命令下に置かれたものと評価することができる。
 したがって、更衣に要する時間は、労働時間に該当すると認めるのが相当である。
(5)原告従業員らに発生している未払賃金は、その金額自体は高額なものとまではいえないが、他方で、長期間にわたって多数の労働者に対する未払賃金が発生していること等本件訴訟に現れた一切の事情に鑑みれば、被告に対し、労働基準法114条に基づき、付加金の支払を命じるのが相当である。