| ID番号 | : | 09605 |
| 事件名 | : | 損害賠償等請求控訴事件 |
| いわゆる事件名 | : | 社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会事件 |
| 争点 | : | 職務限定契約における配転の有効性 |
| 事案概要 | : | (1)本件は、1審被告(社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会)との間の労働契約に基づき、1審被告の本件福祉用具センターにおいて主任技師として勤務してきた1審原告が、 〈1〉1審被告が、安全性に重大な問題のある福祉用具について、寸法を変更し安全を確保する必要があるとの提案を繰り返した1審原告に対し、その製作を繰り返し命じ、服務拒否理由書の提出を求め、業務命令拒否などを理由に本件訓戒書を交付し、繰り返し撤回を求められても本件訓戒書を撤回しなかったことなどにより、1審原告が精神疾患を発病して病気休職に至り、約2年1か月間にわたり通院加療を要することになったとして、労働契約上の安全配慮義務違反の債務不履行による損害賠償請求権に基づき、1審被告に対し、通院慰謝料相当額等の支払、 〈2〉1審被告が、1審原告の復職後、本件福祉用具センターの所長や管理職の発言・態度等について、パワーハラスメントに該当するとして1審被告の内部相談窓口に通報した1審原告に対し、詳細な検討を行うことなく、パワーハラスメントに該当しないとの回答を繰り返し、18年間勤務してきた福祉用具センターの技術職から総務課の施設管理担当に配転する内容の違法な本件配転命令を強行し、また、1審被告の職員給与規程を改正したことを受けた新たな人事評価制度に基づく人事評価において、1審原告を5段階評価のうちの最低ランクに位置づけ、1審原告の基本給を月額3000円減額するという本件不利益変更を行ったことにより、1審原告が精神疾患を再発して、現在も1審被告に勤務できない状況が続いており、通院加療を続けているとして、労働契約上の安全配慮義務違反の債務不履行又は不法行為による損害賠償請求権に基づき、1審被告に対し、通院慰謝料相当額等の支払、 〈3〉本件配転命令は、1審原告と1審被告との間の職種限定合意に反するものであり違法であるか、又は、業務上の必要性、合理性が全く認められず、かつ、1審原告に甘受できない不利益があるとともに、1審被告に不当目的が認められるので権利濫用であるかのいずれかであるところ、これにより1審原告が精神的苦痛を被ったとして、配転法理に照らした労働契約違反による債務不履行又は不法行為による損害賠償請求権に基づき、1審被告に対し、慰謝料100万円及び弁護士費用10万円の合計110万円等の支払、 〈4〉本件不利益変更は、違法な本件配転命令と同時期に1審原告の人事評価を最低ランクに位置づけて行われたものであり、1審原告が福祉用具の安全性について正当な意見を述べ続けることに対して不当な評価が行われた結果によるものであるから、人事権の濫用に当たり、違法・無効であるところ、これにより1審原告の令和元年6月度分賃金が9000円の未払となり、同年7月度分賃金が3000円の未払になるとして、労働契約による賃金請求権に基づき、1審被告に対し、未払賃金等の支払 を求めるものである。 (2)原判決は、1審原告の(1)〈4〉の請求を認容し、他の請求を棄却した。これに対し、1審原告及び1審被告がこれを不服として控訴した。 (3)判決は、原判決は相当であり、1審原告及び1審被告の本件控訴はいずれも理由がないとして、いずれも棄却した。 |
| 参照法条 | : | 労働契約法3条5項 |
| 体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣/ 3 配転命令権の濫用 |
| 裁判年月日 | : | 令和4年11月24日 |
| 裁判所名 | : | 大阪高裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和4年(ネ)1373号 |
| 裁判結果 | : | 控訴棄却 |
| 出典 | : | 労働判例1308号16頁 労働経済判例速報2552号9頁 労働法律旬報2059号45頁 裁判所ウェブサイト掲載判例 D1-Law.com判例体系 |
| 審級関係 | : | 上告受理申立て |
| 評釈論文 | : | |
| 判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣/ 3 配転命令権の濫用〕 (1)当裁判所も、原判決と同じく、1審原告の請求は、1審被告に対し、1万2000円及びうち9000円に対する令和元年6月22日から、うち3000円に対する同年7月22日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があると判断する。 (2)1審原告は、1審原告が令和元年8月に精神疾患を再発させたのは、その直前の時期におけるパワーハラスメントの相談に関する経緯、本件配転命令及び本件不利益変更などの出来事が原因であり、1審被告には安全配慮義務違反がある旨主張する。 1審原告の相談内容がC事務局長ではなく事務局次長に報告されていることは、報告の相手方がパワーハラスメントの当事者とされていたことによる1審被告の1審原告に対する配慮であるということができるし、1審被告は、1審原告から上記パワーハラスメントの相談を持ち掛けられた後、事実関係を確認、調査するなどした上で、2回にわたって、上記各書面で回答しており、その回答内容等に照らしても、1審原告からの上記相談について誠実さを欠く対応をしていたともいい難い。 このことに、本件配転命令が違法無効とはいえないこと、本件不利益変更は人事権の濫用により違法無効であるが、1審原告の当時の勤務内容、勤務状況、上記不利益変更の内容、程度等を併せ考慮すると、1審原告にとって心理的負荷になったからといって、それをもってただちに1審被告に1審原告が主張するような安全配慮義務違反があったとはいい難いというべきである。 (3)本件配転命令は、1審被告における福祉用具改造・製作業務が廃止されることにより、技術職として職種を限定して採用された1審原告につき、解雇もあり得る状況のもと、これを回避するためにされたものであるといえるし、その当時、本件事業場の総務課が欠員状態となっていたことや1審原告がそれまでも見学者対応等の業務を行っていたことからすれば、配転先が総務課であることについても合理的理由があるといえ、これによれば、本件配転命令に不当目的があるともいい難い。1審原告にとって、一貫して技術職として就労してきたことから事務職に従事することが心理的負荷となっていることなど、1審原告が主張する諸事情を考慮しても、本件配転命令が違法無効であるとはいえない。 |