| ID番号 | : | 09609 |
| 事件名 | : | 損害賠償等請求本訴、損害賠償請求反訴事件 |
| いわゆる事件名 | : | 協同組合グローブ事件 |
| 争点 | : | 事業場外みなし労働時間制の適用の有無 |
| 事案概要 | : | (1)本件は、〈1〉上告人協同組合グローブ(以下「上告人グローブ」という。)は広島県福山市に本部を置く事業協同組合であり、熊本、福岡、北九州及び鹿児島に支所を有するほか、各地に出張所を有し、一般監理事業の許可を受け、主に外国人技能実習制度における監理団体となって、組合員のためにする実習生を受け入れる事業を行っており、上告人グローブに勤務していた被上告人(フィリピンで生まれで帰化して日本国籍を取得し、上告人グローブZ1支所(以下、単に「Z1支所」という。)に所属して、外国人技能実習生(以下「実習生」という。)の指導員(キャリア職員)として、フィリピンからの実習生と実習実施者である日本企業との間に入って、通訳、実習生の生活相談、指導などを行っていた。)が、①上告人グローブに対し、被上告人には事業場外労働のみなし制の適用はない、移動時間は労働時間に当たるなどのため賃金の未払があるなどと主張して、労働契約に基づき、未払賃金82万7948円等の支払を求めるとともに、②上告人らに対し、被上告人の上司であった上告人Y2及び上告人Y3(上告人グローブの理事、Z1支所の支所長)等からパワーハラスメントを受けたなどと主張して、上告人Y2(フィリピン出身者であり、被上告人の上司)及び上告人Y3については民法709条、上告人グローブについては民法715条に基づき、連帯して損害金110万円等の支払を求める(本訴)一方で、〈2〉上告人グローブが、被上告人に対し、被上告人が本件訴え(本訴)を提起した日に行った記者会見において上告人グローブの名誉又は信用を毀損する行為をしたなどと主張して、民法709条及び710条に基づき、損害金550万円等の支払を求めた(反訴)事案である。 (2)1審判決は、被上告人の上告人グローブに対する未払賃金請求は、労働契約に基づき賃金29万6080円等の支払及び被上告人の上告人に対するパワーハラスメントに係る損害賠償11万円等の支払を認容し、その余の請求は理由がないとし棄却するとともに、上告人グローブの反訴請求は、被上告人に対し、33万円等の支払を求める限度で理由があるとして認容し、その余は理由がないとして棄却した。 これに対し、被上告人、上告人グローブ及び上告人Y1が、それぞれ1審判決を不服として、控訴を提起した。 (3)控訴審判決は、本訴について、被上告人の請求は、上告人グローブに対し未払割増賃金29万6080円等の支払を求める限度で理由があるものの、その余の割増賃金の請求及びパワーハラスメントを理由とする損害賠償請求はいずれも理由がないとして棄却し、反訴について、上告人グローブの請求は理由がないとし棄却した。これに対し、上告人が上告した。 (4)判決は、控訴審判決には労働基準法38条の2第1項の解釈適用を誤った違法があるとして差し戻しを命じた。 |
| 参照法条 | : | 民法709条 民法710条 労働基準法32条 労働基準法37条 労働基準法38条の2 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 30条の2 |
| 体系項目 | : | 労働時間 (民事)/ 6 事業場外労働 |
| 裁判年月日 | : | 令和6年4月16日 |
| 裁判所名 | : | 最高裁三小 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和5年(受)365号 |
| 裁判結果 | : | 一部破棄差戻し、一部棄却 |
| 出典 | : | 最高裁判所裁判集民事271号85頁 判例時報2607号75頁 判例タイムズ1523号84頁 労働判例1309号5頁 労働経済判例速報2550号3頁 裁判所ウェブサイト掲載判例 |
| 上訴等 | : | 差戻し(令和7年8月28日福岡高判:原判決(控訴審判決)一部変更) |
| 評釈論文 | : | 小西康之・ジュリスト 1599号4~5頁2024年7月 河津博史・銀行法務21 68巻8号66頁2024年7月 皆川宏之・労働法律旬報 2060号26~27頁2024年7月25日 岡崎教行・労働経済判例速報 2550号2頁2024年7月10日 井川志郎・法学セミナー 69巻11号104~105頁2024年11月 河野奈月・ジュリスト 1603号98~104頁2024年11月 長谷川俊明・国際商事法務 52巻11号1323頁2024年11月 松井良和・労働判例 1316号110~117頁2024年11月15日 佐々木亮・季刊労働者の権利 358号74~83頁2024年10月 三笘裕/監修/光明大地・ビジネス法務 24巻12号12頁2024年12月 佐々木達也(労働判例研究会)・法律時報 97巻1号128~131頁2025年1月 石崎由希子(東京大学労働法研究会)・ジュリスト 1606号118~121頁2025年2月 沢崎敦一・経営法曹 222号19~25頁2024年12月 北岡大介・速報判例解説〔35〕――新・判例解説Watch〔2024年10月〕(法学セミナー増刊) 249~252頁2024年10月 庄子浩平・労働法律旬報 2073号30~38頁2025年2月10日 池田悠・季刊労働法 288号106~114頁2025年3月 岩永昌晃・民商法雑誌 161巻1号62~69頁2025年4月 小鍛冶広道・民事判例研究〔2〕――2024年下期(別冊NBL193) 130~133頁2025年7月 |
| 判決理由 | : | 〔労働時間 (民事)/ 6 事業場外労働〕 (1)事業場外労働のみなし制の適用 ア 被上告人が事業場外で従事した業務の一部(以下「本件業務」という。)は、実習実施者に対する訪問指導のほか、技能実習生の送迎、生活指導や急なトラブルの際の通訳等、多岐にわたるものであった。また、被上告人は、本件業務に関し、訪問の予約を行うなどして自ら具体的なスケジュールを管理しており、所定の休憩時間とは異なる時間に休憩をとることや自らの判断により直行直帰することも許されていたものといえ、随時具体的に指示を受けたり報告をしたりすることもなかったものである。 このような事情の下で、業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等を考慮すれば、被上告人が担当する実習実施者や1か月当たりの訪問指導の頻度等が定まっていたとしても、上告人において、被上告人の事業場外における勤務の状況を具体的に把握することが容易であったと直ちにはいい難い。 イ しかるところ、原審は、被上告人が上告人に提出していた業務日報に関し、〈1〉その記載内容につき実習実施者等への確認が可能であること、〈2〉上告人自身が業務日報の正確性を前提に時間外労働の時間を算定して残業手当を支払う場合もあったことを指摘した上で、その正確性が担保されていたなどと評価し、もって本件業務につき本件規定の適用を否定したものである。 しかしながら、上記〈1〉については、単に業務の相手方に対して問い合わせるなどの方法を採り得ることを一般的に指摘するものにすぎず、実習実施者等に確認するという方法の現実的な可能性や実効性等は、具体的には明らかでない。上記〈2〉についても、上告人は、本件規定を適用せず残業手当を支払ったのは、業務日報の記載のみによらずに被上告人の労働時間を把握し得た場合に限られる旨主張しており、この主張の当否を検討しなければ上告人が業務日報の正確性を前提としていたともいえない上、上告人が一定の場合に残業手当を支払っていた事実のみをもって、業務日報の正確性が客観的に担保されていたなどと評価することができるものでもない。 ウ 以上によれば、原審は、業務日報の正確性の担保に関する具体的な事情を十分に検討することなく、業務日報による報告のみを重視して、本件業務につき本件規定にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないとしたものであり、このような原審の判断には、労働基準法38条の2第1項の解釈適用を誤った違法があるというべきである。 |