| ID番号 | : | 09610 |
| 事件名 | : | 治癒認定関係休業補償給付不支給処分取消請求事件 |
| いわゆる事件名 | : | 国・土浦労働基準監督署長(大東建物管理)事件 |
| 争点 | : | 症状固定による休業補償不支給の取消 |
| 事案概要 | : | (1)本件は、勤務先(大東建物管理株式会社つくば営業所)での業務に起因して、平成20年6月上旬(10日頃)、軽症うつ病エピソード(以下「本件疾病」という。)を発病し、処分行政庁である土浦労働基準監督署長(以下、労働基準監督署を「労基署」、労働基準監督署長を「労基署長」という。)より労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく給付を受けていた原告につき、平成31年3月31日の時点で本件疾病が治癒(症状固定)したとして、同労基署長が原告の請求した休業補償給付のうち同年4月1日から同月12日までの給付を支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)をしたところ、原告が、被告(国、労基署長等)に対し、本件疾病が治癒(症状固定)していないと主張して、本件処分の取消しを求めた事案である。 (2)判決は、処分行政庁である土浦労基署長が令和4年4月1日から同月12日までの休業補償給付を支給しない旨の処分(本件処分)をしたことは適法であるとして、原告の請求を棄却した。 |
| 参照法条 | : | 労働者災害補償保険法14条 |
| 体系項目 | : | 労災補償・労災保険/補償内容・保険給付/ (2) 休業補償 (給付) |
| 裁判年月日 | : | 令和4年10月7日 |
| 裁判所名 | : | 水戸地裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和3年(行ウ)2号 |
| 裁判結果 | : | 棄却 |
| 出典 | : | 労働判例1316号35頁 |
| 審級関係 | : | 控訴 |
| 評釈論文 | : | |
| 判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険/補償内容・保険給付/ (2) 休業補償 (給付)〕 (1)平成31年3月22日及びその前後での急性症状の有無 平成31年3月22日及びその前後において、原告の症状が悪化していたとは認めるに足りないというべきであるが、仮に同日頃に原告の症状の悪化があったとしても、B医師がこれについてストレスが強まることで原告の症状が悪化する可能性があることを指摘しながらも、同月31日付けで治癒(症状固定)に至ったと診断したこと、原告はその後医師の判断に基づいて精神障害に係る後遺障害を認定されたことに照らせば、原告の症状は、医師の判断においても、治癒(症状固定)後にも一定の幅の中で変動することが想定されていたものと認められる。そうすると、治癒(症状固定)が否定されるためには、原告の症状の悪化がその幅を超える程度の顕著なものであることを要すると解するべきであるが、これを認めるに足りる的確な客観的証拠はない。 また、労災保険法上の治癒(症状固定)の判断において、症状が安定し、疾病が固定した状態にある、すなわち、急性症状が消退し、慢性症状が持続している状態とは、当然に業務起因性が認められる傷病に関する急性症状を指すものと解され、それとは別に当初の業務以外の原因により再度、急性症状が発現したとしても、これを考慮して治癒(症状固定)を否定することはできないというべきである。そうすると、仮に、前勤務先との顧客情報漏洩の隠蔽を巡る係争により原告の症状が悪化したということがあったとしても、原告は既に前勤務先を退職しており、このような係争に関わることが原告の業務に含まれると評価することはおよそ困難であるから、いずれにしても、これを本件疾病の治癒(症状固定)の判断において考慮することはできないというべきである。 以上の次第で、原告が平成31年3月22日及びその前後の時点でその症状が悪化し急性症状があったとの事実は認められない。 (2)令和元年9月25日以降の治療による症状の改善 原告は、令和元年9月25日以降、C病院での薬物療法及びデイケアにより原告の症状が改善傾向にあったから、本件処分当時、治癒(症状固定)に至っていなかったと主張する。 しかし、令和元年9月25日以降の治療により、原告に治癒(症状固定)を否定するほどの顕著な症状の改善があったとの事実は認められない。 (3)平成30年3月31日時点での治癒(症状固定) 本件処分では、原告の療養期間が傷病の発現から相当長期間にわたっており(本件疾病が発病した平成20年6月10日頃から治癒(症状固定)と判断された日まで約10年9か月間が経過している。)、平成25年頃に急性症状が消退して以降、通院頻度がおおむね月1回から2回程度で推移し、精神療法や同種・同程度の量の薬物療法が継続されるも、原告の意欲低下や倦怠感、不眠等の症状に改善が見られなかったこと、特に、主治医として原告を継続的に診察していたB医師が、労基署と面談した平成30年4月5日以降継続して原告を診察し続けた上で、平成31年3月31日での本件疾病の治癒(症状固定)を診断したこと、原告が後遺障害等級第9級の7の2の後遺障害の認定を受けており、原告の症状が一定の幅の中で変動することが想定されていることなどからすると、同日に本件疾病が治癒(症状固定)に至ったとの判断は、合理的というべきである。 |