| ID番号 | : | 09611 |
| 事件名 | : | 治癒認定関係休業補償給付不支給処分取消請求控訴事件 |
| いわゆる事件名 | : | 国・土浦労働基準監督署長(大東建物管理)事件 |
| 争点 | : | 症状固定による休業補償不支給の取消 |
| 事案概要 | : | (1)本件は、勤務先(大東建物管理株式会社つくば営業所)での業務に起因して、平成20年6月上旬(10日頃)、軽症うつ病エピソード(以下「本件疾病」という。)を発病し、処分行政庁である土浦労働基準監督署長(以下、労働基準監督署を「労基署」、労働基準監督署長を「労基署長」という。)より労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく給付を受けていた控訴人につき、平成31年3月31日の時点で本件疾病が治癒(症状固定)したとして、同労基署長が控訴人の請求した休業補償給付のうち同年4月1日から同月12日までの給付を支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)をしたところ、控訴人が、被控訴人(国、労基署長等)に対し、本件疾病が治癒(症状固定)していないと主張して、本件処分の取消しを求めた事案である。 (2)原判決は、処分行政庁である土浦労基署長が令和4年4月1日から同月12日までの休業補償給付を支給しない旨の処分(本件処分)をしたことは適法であるとして、控訴人の請求を棄却したところ、これを不服として控訴人が控訴を提起した。 (3)判決は原判決を取り消し、控訴人の請求を認容し、本件疾病は平成31年3月31日当時、治癒(症状固定)していなかったと認めるのが相当であって、本件処分は違法であるとし、本件処分を取り消した。 |
| 参照法条 | : | 労働者災害補償保険法14条 |
| 体系項目 | : | 労災補償・労災保険/補償内容・保険給付/ (2) 休業補償 (給付) |
| 裁判年月日 | : | 令和6年1月31日 |
| 裁判所名 | : | 東京高裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和4年(行コ)317号 |
| 裁判結果 | : | 原判決取消 |
| 出典 | : | 判例タイムズ1531号77頁 労働判例1316号22頁 |
| 審級関係 | : | 確定 |
| 評釈論文 | : | |
| 判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険/補償内容・保険給付/ (2) 休業補償 (給付)〕 (1)本件疾病は双極性障害(双極Ⅱ型障害)か否か 控訴人は、平成31年3月31日当時、控訴人が双極性障害(双極Ⅱ型障害)を発症していたと主張し、これに沿うD意見書及びH意見書等を提出している。これに対し、被控訴人は、同日当時の本件疾病は双極性障害ではなくうつ病(軽症うつ病エピソード)であったと主張し、これに沿う意見書等を提出している。 したがって、D意見書及びH意見書は、控訴人が実際に経験した出来事を基礎に、これをDSM-5又はICD-10DCRの各基準に当てはめて結論を導き出したものであって、その推論の過程にも不自然、不合理な点はないから、上記両意見書は信用できるというべきであって、平成31年3月31日当時の控訴人の精神疾患(本件疾病)は双極性障害(双極Ⅱ型障害)であったと認めるのが相当である。 (2)本件疾病は平成31年3月31日当時に治癒(症状固定)していなかったか否か 被控訴人は、控訴人の疾患名を特定することは困難である一方、抑うつ状態を主症状とする点についてはB医師もD医師も所見が一致しているから、診断名の違いは重視されるべきではないと主張する。 しかし、うつ病と双極性障害とでは治療方法が異なるのであって、B医師が行っていた治療はかえって双極性障害の病態を悪化させるおそれのあるものであったと認められるから、診断名の違いが重要でないとはいえない。 被控訴人は、本件疾病は一定の幅で変化するものとして慢性化してきたのであって、令和元年9月以降の病状は、当該「幅」を超えて改善してきているとはいえないし、当該改善は控訴人が前勤務先との関係を切断したことによるものであって、転院後の治療の効果であるとはいえないと主張する。しかし、控訴人には能力や意欲の向上が認められ、一般就労まで実現しているのであって、これが令和元年9月より前には見られなかった病状の改善であることは明らかであるから、これが一定の幅にとどまるものであったということはできない。そして、控訴人がC病院に転院した後に初めて双極性障害を前提とした治療を受け、その後に上記改善が認められたことからすれば、上記改善は同病院でラモトリギンの投与をはじめとする治療を受けた結果であると推認される。また、控訴人がD医師の指導を受けて前勤務先との関係を切断したことが上記改善に寄与しているとしても、そのこと自体、医師による治療の一環とみるべきであるから、上記改善は、同病院での治療が功を奏したものとみるべきである。 そうすると、本件疾病は平成31年3月31日当時に治癒(症状固定)していなかったと認めるのが相当である。 |