| ID番号 | : | 09614 |
| 事件名 | : | 賃金請求事件 |
| いわゆる事件名 | : | 中日新聞社(錬成費不支給)事件 |
| 争点 | : | 60年以上支給されていた錬成費の労働契約上の位置付け |
| 事案概要 | : | (1)本件は、被告(日刊紙の発行等を業とする株式会社)の従業員でありA労組執行委員長の地位にある原告が、被告が、令和2年3月25日の給与支給日に錬成費(注)を支給しなかった。このため、原告は、被告に対し、毎年従業員に支給していた錬成費の支給は、労使慣行(又は黙示の合意)として労働契約の内容となっていると主張して、労働契約に基づき、〈1〉令和2年分の錬成費及び遅延損害金の支払、〈2〉令和3年から毎年3月25日限り、錬成費及び遅延損害金の支払を求める事案である。 (注)被告が、昭和30年代に、C株式会社(現在のD株式会社。以下「本件保険会社」という。)との間で、団体定期保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結し、本件保険契約に基づき、1年ごとに毎年3月に1年満了給付金が被告に還付された還付金を得られたことを契機として、還付金を従業員に還元するため、錬成費の支給が始まった。 (2)判決は、錬成費の支給が使用者と労働者の双方を拘束する法的効力を有する労使慣行が成立していたとは認められず、黙示の合意があったとも認められないとして、原告の請求を棄却した。 |
| 参照法条 | : | 民法92条 労働契約法 労働基準法24条 |
| 体系項目 | : | 賃金(民事)/ 賃金の範囲 |
| 裁判年月日 | : | 令和5年8月28日 |
| 裁判所名 | : | 東京地裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和2年(ワ)27018号 |
| 裁判結果 | : | 棄却 |
| 出典 | : | 労働判例1321号10頁 労働経済判例速報2543号25頁 |
| 審級関係 | : | 控訴 |
| 評釈論文 | : | |
| 判決理由 | : | 〔賃金(民事)/ 賃金の範囲〕 (1)労使慣行の成否について 被告が、錬成費について、労働条件である給与の支払と同様に支給を継続する必要がある金員として支給を開始したものとは認められず、その後、被告が長年にわたり従業員に錬成費を支給してきた事実はあるものの、その間に行われた錬成費の支給に係る変更は、いずれも使用者による一方的な変更によって行われており、労使双方の合意が必要であるものとされていなかったということが認められる。また、従業員においても錬成費を給与に類するものとして受け止めていたとはうかがわれず、被告は一貫して錬成費の支給手続等について給与の支払とは異なる取扱いをしていたのであるから、錬成費の支給という当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていたとは認められない。 長年にわたり、被告が、従業員等に対して年間で合計3000円の錬成費を支給していたという事実をもってしても、当該慣行が使用者と労働者の双方を拘束する法的効力を有する労使慣行として成立していたとは認められない。 (2)黙示の合意の成否について 被告が長年にわたり従業員に錬成費を支給してきた事実はあるものの、その間に行われた錬成費の支給に係る変更は、いずれも使用者による一方的な変更によって行われており、労使双方の合意が必要であるものとされていなかったこと、従業員においても錬成費を給与に類するものとして受け止めていたとはうかがわれず、被告は一貫して錬成費の支給手続等について給与の支払とは異なる取扱いをしていたことなどから、被告及び原告を含む従業員等との間では、錬成費の支給は被告による任意的恩恵的なものと位置付けられていたとみるのが相当である。 したがって、錬成費の支給について、黙示の合意により労働契約の内容になっていたとは認められない (3)錬成費の支給が使用者と労働者の双方を拘束する法的効力を有する労使慣行が成立していたとは認められず、黙示の合意があったとも認められない。 したがって、錬成費の支給が原告と被告との間の労働契約の内容になっていたということはできない。 |