全 情 報

ID番号 09618
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 ぱぱす事件
争点 販売コンクールでの不正行為を理由とする懲戒解雇の有効性
事案概要 (1)本件は、薬局の開設、医薬品・医薬部外品の販売等を目的として、ドラッグストア等を経営する株式会社ぱぱす(以下「被告」という。)が、被告の店長である原告を、販売コンクール(以下「コンクール」という。)において、自らが店長を務めていた店舗において、コンクールの目標を達成するためにコンクールの対象となっている商品を購入し、目標を達成した後に当該商品を返品した行為を繰り返したことを理由として懲戒解雇したところ、原告はこの懲戒解雇は無効であるとして、次の各請求をする事案である。
 〈1〉 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
 〈2〉 原告が令和3年9月以降、労務を提供していないのは、被告の責めに帰すべき事由によるものであると主張して、令和3年10月25日から、本判決確定の日の属する月までの月例賃金等の支払
(2)判決は、本件懲戒解雇は有効であるとして、原告の請求をいずれも棄却した。
参照法条 労働契約法15条
労働契約法16条
体系項目 懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/ (3) 職務上の不正行為
裁判年月日 令和6年1月25日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 令和4年(ワ)5230号
裁判結果 棄却
出典 労働経済判例速報2560号29頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/ (3) 職務上の不正行為〕
(1)原告の行為は、店舗が一丸となって販売活動の意識を高めつつ、他の店舗と競い合いながら店舗としての販売レベルを向上させていくとのコンクールの実施目的に反するものであって、店長自らがコンクールの対象商品を購入すること及び当該商品を返品すること自体は禁じられていなかったことを考慮しても、コンクールの目標を達成するように意図的に売上げを操作する行為であると認められる。
 被告社内においては、コンクールの結果としてコンクールの主催者から報奨金等が出されることになるほか、店舗ないし店長の業績評価につながるものであることから、コンクールにおける不正行為は絶対に許されないとされており、コンクールの不正行為等を理由に従業員が懲戒解雇され、これが全店舗に告示されていたことなどを踏まえると、原告の行為は被告において厳に禁じられ、懲戒処分にもつながる行為であり、原告においてもそれを十分認識していたものと認められる。
 原告の行為は、被告が従業員による商品、金銭に関する不正を防ぐために定めたルールを全く履践しなかった結果、被告が極めて厳正に対処するとしている現金又はポイントの不正取得の結果を生じさせたものと評価すべきである。
 以上の点に加えて、〈1〉原告は、他の従業員を指導する立場である店長の職にあったこと、〈2〉原告の行為は、合計9回と繰り返して行われていることも併せて考慮すると、原告の行為は、多くのドラッグストアを営む被告にとって、許容し難いものであったといわざるを得ない。
(2)原告がコンクールの目標達成により現に報奨金を受け取っておらず、また具体的に事業上の支障が生じたのかは明らかではないこと、原告が不正に取得した4201円が多額とまではいえず、また同額については、原告は被告に弁償していること、原告は被告において20年以上勤務し、その間、他に問題があったとも認められないことなどの原告に有利な事情を考慮したとしても、原告の行為は、商品、金銭(ポイント)の管理を一定程度、現場従業員に委ねることを前提として成り立っている小売業者である被告において、従業員に対する信用を著しく失わせるものといわざるを得ず、商品、金銭(ポイント)に関する不正を防ぐために、金額の多寡を問わず、懲戒解雇等の厳格な処分をするとの被告の方針の下で、企業秩序維持の観点から、原告についても同種事案と同様に厳正に対処すべく懲戒解雇を選択したことが相当性を欠くとまではいえない。
(3)被告は、原告に対し、令和3年9月7日に弁明の機会を付与した上で、同月8日に取締役管理本部長、取締役店舗運営本部長、店舗運営部長及びぱぱすユニオン執行委員長を構成メンバーとする懲罰委員会を開催し、懲戒解雇とする処分案が満場一致で決議された後に、同月9日に取締役会において原告を懲戒解雇とすることを決定し、その旨を本人に伝えたことが認められ、このような経過からすると、懲戒手続の相当性を欠くとまではいえない。