| ID番号 | : | 09620 |
| 事件名 | : | 雇用契約上の地位確認等請求事件 |
| いわゆる事件名 | : | 国立大学法人横浜国立大学事件 |
| 争点 | : | 入試不正等を理由とする懲戒解雇の有効性 |
| 事案概要 | : | (1)原告は、国立大学法人である被告との間で期間の定めのない労働契約を締結して教授として勤務しており、次世代グローバル人材育成を目的として、英語を使用言語とする教育により学士(学術)の学位が取得できる学部横断教育プログラムであるY大学F特別プログラム(以下「F」という。)の立上げから一貫してFに関わり、Fの運営を担っているF特別プログラム委員会(以下「F委員会」という。)の委員を務め、他の教員とは異なりFを主たる業務として担当している唯一の教員であった。 被告は、令和3年2月19日、原告に対し、入試不正、学生の成績不正・課題捏造などを理由として、懲戒処分書及び処分説明書を交付した(以下「本件解雇」という。)。これに対し、原告は被告による懲戒解雇処分が無効であるとして、被告に対し、雇用契約上の地位の確認を求めるとともに、令和3年3月から本判決確定の日までの賃金、賞与等の支払を求める事案である。 (2)判決は、被告の本件解雇を有効として、原告の請求を棄却した。 |
| 参照法条 | : | 労働契約法16条 |
| 体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/ (3) 職務上の不正行為 |
| 裁判年月日 | : | 令和6年2月8日 |
| 裁判所名 | : | 横浜地裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和3年(ワ)909号 |
| 裁判結果 | : | 棄却 |
| 出典 | : | 労働判例1315号47頁 D1-Law.com判例体系 |
| 審級関係 | : | 控訴 |
| 評釈論文 | : | |
| 判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/ (3) 職務上の不正行為〕 (1)懲戒解雇事由の存否 〈1〉非違事由4(入試不正)について Fの令和2年度入試において原告が行ったように、他の教員の評価点を、これら教員らに説明することなく、原告において点数を改ざんすることがF委員会において合意され、その旨の申合せがされていたと認めることはできない。 Fの令和2年度入試において原告が他の教員による評価点を無断で変更したことが、F委員会の国籍調整の申合せや事務局の指示に基づくものであると認めることはできない。 以上によると、原告は、Fの令和2年度入試の合否判定に係る他の教員の評価点を無断で改ざんしたものと認められ、原告の行為は入試における公正な選考を妨げるものであり、「誠実かつ公正に職務を遂行」することを怠り、被告の「不名誉となる」ものであるから、就業規則41条(服務の根本基準)及び43条(信用失墜行為の禁止)に違反したものである。原告がこのような評価点の改ざんを行ったことは、原告個人の利益を図る目的であったとは認められないが、原告の行為は、「故意又は重大な過失により本学に損害を与えたとき」など、就業規則36条1号から3号までに掲げる行為に準ずるものであるから、就業規則36条4号(懲戒の事由)に該当するものと認められる。 〈2〉非違事由1(成績不正・課題捏造)について 原告は、本件科目〈3〉(Advertisement Art)の成績を被告に提出した後、その裏付けとなる課題等の資料の提出を求められた際、成績評価の対象となった学生について、架空の課題を作出し、課題免除権という実在しない制度が存在したものとして、虚偽の内容の資料を提出し、複数の学生アシスタントに架空の課題の作成に関与させている。原告の行為は、成績評価の公正を著しく害するものであり、学生との間の信頼関係が損なわせ、ひいては学生と被告との信頼関係を損なうものである。 したがって、原告の行為は、「誠実かつ公正に職務を遂行」することを怠り、被告の「不名誉となる」ものであるから、就業規則41条及び43条に違反したものであり、就業規則36条4号に該当する。 (2)本件解雇が社会通念上相当であるか 入試の採点及び授業の成績評価は大学教員として重要かつ基本的な職務であり、入試の結果や授業の成績評価が学生のその後の進級、卒業、学位取得に影響を与え、ひいては、学生の就職、転職等に際しても人物評価のための判断材料となり得ることを踏まえれば、原告の行為(非違事由1及び4)は、大学の教員として、被告が提供する大学教育に対する信頼を根本的に損ねる重大な行為であり、被告の社会的信頼性に大きく害するものといわざるを得ない。 原告がこれまでに懲戒処分を受けたことがなかったこと、非違事由1及び4については、原告自身の利益を図るものではなかったことを考慮しても、原告の行為の態様、結果の程度等を総合考慮すれば、本件解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないということはできない。 この点、原告は、業務が多忙を極めていた事情を指摘するが、仮に、原告が主張するように、原告の業務が多忙を極めていたとしても、かかる事情によって原告の非違行為が正当化されるものではない。 |