| ID番号 | : | 09625 |
| 事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
| いわゆる事件名 | : | 華為技術日本事件 |
| 争点 | : | 能力不足による解雇の有効性 |
| 事案概要 | : | (1)本件は、被告(情報通信機器の企画開発、製造、販売、設置、保守等を目的として設立された華為技術日本株式会社)においてデジタルマーケティングを担当していた原告が、2020年3月13日付けで普通解雇されたため、これが無効であると主張して、被告に対して、以下の各請求をする事案である。 〈1〉 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認 〈2〉 解雇日から本判決確定の日までの賃金等の支払 〈3〉 2020年から本判決確定の日までの賞与等の支払 〈4〉 不法行為に基づく損害賠償等の支払 〈5〉 人格権に基づく本判決確定の日から1年間の原告に対するパフォーマンスの改善を目的とする業務改善計画(Performance Improvement Plan。以下本件に係る業務改善計画を「本件PIP」という。)の実施の差止め (2)判決は、原告の請求のうち、〈1〉〈2〉の請求を認容し、その他の請求を棄却した。 |
| 参照法条 | : | 民法709条 労働契約法16条 |
| 体系項目 | : | 解雇 (民事)/ 解雇事由/ (3) 職務能力・技量 |
| 裁判年月日 | : | 令和6年3月18日 |
| 裁判所名 | : | 東京地裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和2年(ワ)21992号 |
| 裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
| 出典 | : | 労働経済判例速報2563号20頁 D1-Law.com判例体系 |
| 審級関係 | : | |
| 評釈論文 | : | |
| 判決理由 | : | 〔解雇 (民事)/ 解雇事由/ (3) 職務能力・技量〕 (1)被告が原告の就労状況を踏まえ、本件PIPを実施したことは相当であったというべきである。しかしながら、本件PIP期間を終えて退職勧奨に踏み切る前に、被告において求められる業務の在り方についてより踏み込んだ指導や教育を施す余地はあったと考えられる。一例を挙げれば、S本部長は繰り返し数字の報告にとどまらない「分析」を求めたが、原告は被告において求められる「分析」がいかなるものか理解できないまま、従前どおり被告には「分析」とは評価し得ない程度のコメントを付することを繰り返していたことが窺われる。本件PIPについても、その目標設定は原告の就労状況に照らして適切なものと考えられるが、実施の過程で原告と上長との面談等がどの程度行われ、被告が原告に求める業務改善の具体的内容について原告との間で共有されていたのか、本件PIP実施中の原告の取り組みにつきどのようなフィードバックがされていたのか等の詳細については、本件証拠上明らかでない。 原告はデジタルマーケティングの経験者として中途採用されたとはいえ、管理職ではないデジタルマーケティングの1担当者にすぎず、給与水準もそれなりに高いとはいえ、被告内部における相対的位置付けは明らかでないこと、被告への入社からはそれほど長い期間を経過していたわけではないことにも鑑みれば、上記のような指導、教育が十分に行われた事実が認められないにもかかわらず、能力不足を理由に行われた本件解雇については、客観的合理的理由があり社会通念上相当であるとはいえず、無効であるというべきである。 (2)原告は、被告に対して、月額60万円の賃金請求権を有していると認められる。 (3)本件労働契約において、被告の業績等を問わず、当然に年間240万円(毎年6月末に96万円、毎年12月15日に144万円)の賞与が支給される旨の合意が成立していると認めることはできない。したがって、原告は、被告に対し、賞与請求権を有しているとは認められない (4)本件解雇は無効であるとはいえ、原告の就業過程において不十分又は不適切な業務遂行があった事実が一定程度認められ、原告のSenior Digital Marketing Managerとしての能力不足を窺わせる事情も相応に認められること、原告の就労状況に照らせば、被告が本件PIPを実施したことには合理的な理由があったということができ、他の不当な動機により本件解雇に及んだと認めるに足りる証拠はないこと等に照らせば、本件解雇によって、原告に上記(2)の金銭給付によって補填できないような精神的苦痛が生じたとは認められない。 (5)本件PIPを実施したことに合理的な理由が認められ、原告の就労状況を改善する目的以外の不当な動機は窺われず、原告が主張するように、自尊心を傷つけ、名誉感情を害し、屈辱感、焦燥感、恐怖心などを生じさせるような不当な態様で実施された事実を認めるに足りる証拠もない。したがって、原告が復職した場合に、被告が原告の人格的利益を侵害する態様でPIPを実施するおそれがあると認めることはできず、原告の主張を採用することはできない。 |