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ID番号 09626
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 明和住販流通センター事件
争点 降格処分と解雇処分の有効性
事案概要 (1)本件は、被告(不動産の売買、賃貸、仲介及び管理等を目的とする株式会社)と労働契約(以下「本件労働契約」という。)を締結し正社員として勤務していた原告(本件当時、病気療養を理由とする時短勤務をしていた。)が、被告から令和4年8月30日付けで懲戒処分として降給降格された(以下「本件降給降格処分」という。)こと、同年9月27日付けで普通解雇された(以下「本件解雇」という。)ことについて、いずれも無効である旨主張して、被告に対し、〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、〈2〉本件降給降格処分前のクラス及び賃金を受ける地位にあることの確認、〈3〉本件解雇以降の賃金等の支払を求めた事案である。
(2)判決は、本件降給降格処分は有効と認めた上で、本件解雇は無効として、解雇後の本件降給降格処分による賃金の支払を認容した。
参照法条 労働契約法15条
労働契約法16条
体系項目 懲戒・懲戒解雇/ 3 懲戒権の濫用
裁判年月日 令和6年3月21日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 令和4年(ワ)27730号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1330号39頁
D1-Law.com判例体系
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇/ 3 懲戒権の濫用〕
(1)本件降給降格処分の有効性
 原告は、上司であるA次長に対し、原告が令和3年4月5日及び同月8日に本件メールを送信したところ、その内容は、上司に対する礼節を欠く表現を用いて非難するものであるとともに、A次長が原告のパソコンの画面を見るといった上司としての部下に対する監督行為について「いい歳のおっさん」「気持悪い」というように中傷する内容まで含まれている。これらは、原告の上司に対するハラスメントというべきものであり、職場規律違反に該当し部下と上司との関係といった企業秩序の根幹にあるものを乱す行為であるから、原告は、被告の就業規則45条22号の服務心得に違反したものとして就業規則49条8号の懲戒事由に該当するといえる。
 その上で、被告が懲戒処分の中で、降給降格処分を選択したことについては、原告に対する懲戒処分が初めてであったことなどを踏まえても、上記の非違行為の内容及び程度に照らせば、重すぎるということはできない。本件降給降格処分の内容についてみても、原告のクラスをS1クラスからS2クラスに降格したことについては、1段階の降格にとどまるから、上記の非違行為の内容及び程度に照らして、重すぎるということはできない。また、その賃金の減額幅については、時短調整前基本給を基準にすると2万円の減額にとどまるから、原告に対して与える打撃の程度に鑑みても被告の権利の濫用に該当するとはいえない。
 したがって、本件降給降格処分は、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に該当しないから有効である。
(2)本件解雇の有効性
 被告が解雇事由として主張する事実は、いずれも解雇事由足りえないものである。とりわけ、被告は、本件解雇の就業規則上の根拠として原告が就業規則50条8号及び9号の懲戒解雇事由に該当する旨主張しているところ、懲戒解雇という効果の重大性に鑑みても、原告が懲戒解雇事由に該当しないことは明らかである。
 なお、原告に一部不適切な言動等が認められるものの、被告から注意指導をされながらも、これを繰り返したといった事実を認めるに足りる証拠はないから、原告について改善の余地がなかったとはいえない。また、原告は、本件メールを理由として令和4年8月に本件降給降格処分を受けているから、被告においても、本件降給降格処分当時、原告に解雇事由はないと認識していたといえるし、原告に対し改善の機会を与える趣旨のものと評価することができる。しかしながら、その後の出来事として、原告が被告に対して本件弁明書を提出したことについては、本件降給降格処分の再検討を求めるなど反省の態度にやや疑問を生じさせる記載があるものの、この限度にとどまり新たに非違行為をしたとかトラブルを生じさせたということまではできない。また、被告は、本件降給降格処分後に、就業時間中の私的行為が発覚したことから本件解雇に及んだ旨主張するが、これが解雇事由にならないことは説示したとおりである。
 したがって、原告は、被告の就業規則上の解雇事由に該当せず、本件解雇は、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合に該当するから無効である。
(3)原告の賃金(賞与を含む)請求権の有無及び金額
 本件解雇は無効であるから、原告は、被告に対する本件解雇以降の賃金請求権を失わない。ただし、本件降給降格処分は有効であるから、原告の月額賃金は、時短調整後の基本給で月額29万2320円である。
 原告が被告に対し解雇後の賃金として請求できるものは、労働契約上確実に支給されたであろうものに限られるところ、賞与については成績査定等によって初めて具体的権利として発生するのが通常と解され、本件においても原告の請求する賞与が労働契約上確実に支給されたであることを認めるに足りる証拠はない。
 したがって、原告の被告に対する賞与請求は理由がない。