| ID番号 | : | 09627 |
| 事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
| いわゆる事件名 | : | JR東海(変形労働時間制)事件 |
| 争点 | : | 新幹線運転士の変形労働時間制の有効性 |
| 事案概要 | : | (1)本件は、旅客鉄道事業等を営む東海旅客鉄道株式会社である被告に雇用され、新幹線運転士として勤務していた原告ら3名が、被告に対し、被告は、就業規則上、毎月25日までに交付する勤務指定表で翌月の具体的な勤務内容を明示すべきであるにもかかわらず、一部の日を空白にしたものを交付したことが、〈1〉変形労働時間制(労働基準法(以下「労基法」という。)32条の2)の要件を満たさないと主張して、雇用契約に基づき割増賃金等の支払を求めるとともに、〈2〉不法行為に当たると主張して、慰謝料等の支払を求める事案である。 (2)判決は、原告らの請求を棄却した。 |
| 参照法条 | : | 労働基準法32条の2 |
| 体系項目 | : | 労働時間 (民事)/ 変形労働時間/ (1) 一カ月以内の変形労働時間 |
| 裁判年月日 | : | 令和6年3月27日 |
| 裁判所名 | : | 大阪地裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和3年(ワ)4740号 |
| 裁判結果 | : | 棄却 |
| 出典 | : | 労働判例1319号177頁 |
| 審級関係 | : | 控訴 |
| 評釈論文 | : | |
| 判決理由 | : | 〔労働時間 (民事)/ 変形労働時間/ (1) 一カ月以内の変形労働時間〕 (1)労基法32条の2は、就業規則等により1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が週の法定労働時間を超えない定めをした場合においては、法定時間の定めにかかわらず、その定めにより、特定された週において一週の法定労働時間を又は特定された日において一日の法定労働時間を超えて労働させることができる旨を定めているところ、この規定が適用されるためには、単位期間内の各週、各日の所定労働時間を就業規則等において特定する必要がある(最高裁平成14年2月28日第一小法廷判決・民集56巻2号361頁〈大星ビル管理事件〉。以下、上記の事項について特定する必要があるものを「事前特定要件」という。)。 (2)原告らは、いずれも東海道新幹線の運転士であり、労基法別表第一4号所定の事業に従事し、労基則26条所定の「列車(略)又は電車に乗務する労働者」に当たる。したがって、原告らが、本件各空白日指定を受けた月について、同条所定の「予備の勤務に就くもの」に該当すれば、被告は、原告らに対し、労基法32条の2が定める事前特定要件を満たすことなく、労基則26条所定の限度内において、一週間について40時間、一日について8時間を超えて労働させることができるものと解される。 空白日指定がされた月の原告らの勤務は、毎月25日の勤務指定表発表の後に運行が確定する臨時列車の乗務や、定期列車に乗務する交番担当乗務員の年休取得に伴う代替勤務等に従事するものであり、「予備の勤務に就くもの」であったものと認めるのが相当である。 原告らの主張を検討しても、本件各空白日指定がされた月の原告らの勤務は「予備の勤務に就くもの」であったものと認めるのが相当であり、本件変形労働時間制は有効である。 (3)本件変形労働時間制は有効であるから、被告は、原告に対し、事前特定要件を満たすことなく、労基法32条所定の時間を超えて労働させることができる。原告らは、本件変形労働時間制が有効な場合であっても、時間外労働により割増賃金が生じることを主張立証しない。したがって、原告らの割増賃金請求は理由がない。 (4)空白日指定によって翌月の生活の予定が立て難い日があったとしても、1年に十数日程度である上、5日前には勤務内容等が明らかとなるから、生活設計に与える影響は限定的なものにとどまるというべきである。 これらの事情に照らせば、本件各空白日指定は違法ということはできず、不法行為に当たらない。 以上によれば、原告らの不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。 |