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ID番号 09629
事件名 割増賃金等請求事件
いわゆる事件名 SMAジャパン事件
争点 管理監督者性
事案概要 (1)本件は、SMAジャパン株式会社(以下「被告」という。被告は、太陽光発電パワーコンディショナの開発・生産・販売を行っているドイツ法人のSMA Solar Tecnology AGの日本法人(100%子会社)。)との間で労働契約を締結し、被告の法務・人事部門を統括する法務部長兼人事部長として勤務していた原告が、被告に対し、次の各請求をする事案である。
 〈1〉 労働契約に基づき、令和2年4月1日から令和3年9月29日(退職日)までの間の時間外労働及び深夜労働に係る未払割増賃金等の支払請求(請求の趣旨第1項)
 〈2〉 労働基準法114条に基づき、付加金等の支払請求(請求の趣旨第2項)
なお、被告は、令和4年1月18日、原告に対し、本件請求期間の深夜勤務合計88時間29分に対応する割増賃金として12万1431円(税控除前12万6912円)及びこれに対する遅延損害金として8910円を支払っている。
(2)判決は、原告のいずれの請求も棄却した。
参照法条 労基法41条2号
体系項目 労働時間 (民事)/ 12 労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者
裁判年月日 令和6年3月28日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 令和4年(ワ)24742号
裁判結果 棄却
出典 D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間 (民事)/ 12 労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者〕
(1)職務内容、権限及び責任
 原告は、被告代表者とともに被告の重要な経営上の意思決定に関する事項を話し合う合議体であるジャパン・マネジメント・コミッティ(以下「JMC」という。)のメンバーとして被告の経営の中核に関与するとともに、被告代表者に代わって、法務・人事部門という被告にとって重要な部門を統括し、同部門の社員の人事及び労務管理を行う権限を相当程度有していたものと認められるから、労基法の定める労働時間規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ない重要な職務と権限を付与されていたといえる。
(2)勤務態様
 被告では、原告を含む社員全員に対し、出退勤記録システムへの出退勤時刻の記録を指示していたことが認められるものの、一方で、管理監督者と扱われていた者(ジョブレベル7以上の社員。原告のジョブレベルは8。)は、一般の社員とは異なり、所定就業時間中であっても、被告代表者に連絡すれば、上司の承認を得ることなく、途中から在宅勤務に切り替え、帰宅することが許されていたこと、原告と同様に部門長の職にあったE氏は、所定終業時刻の午後5時30分前でも帰宅することができていたことが認められる。また、本件全証拠によっても、原告について遅刻、早退等に対し、欠勤控除がされていたなど、その勤怠管理が厳格に行われていたことをうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、原告が職務繁忙等の理由により所定労働時間内は就業を余儀なくされるような状況にあったとしても、原告の勤怠が厳格に管理されていたと評価することはできない。
(3)待遇
 原告は、本件請求期間中、令和3年4月支給分までは理論年収1200万円、同年5月支給分以降は理論年収1420万円の賃金の支給を受けていたところ、これらの額は、被告において管理監督者ではない者として扱われているジョブレベル6以下の社員の平均理論年収645万円と比較すると、相当に高額であるといえる。さらには、管理監督者として扱われているジョブレベル7以上の社員の中でも3番目に高く、これら社員の理論年収の中央値970万円と比較しても、相当に高額である。
 そうすると、原告には、原告の職務及び権限に相応しい待遇がされていたと評価することができる。
(4)以上によれば、原告は、被告において管理監督者の地位にあったと認められるから、労基法上の法定労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されず、被告に対し、時間外労働及び休日労働に対する割増賃金の支払を求めることはできない。
 これに対し、深夜割増賃金については、管理監督者に該当する労働者であっても使用者に対し請求することができるものの、被告は、令和4年1月18日、原告に対し、本件請求期間中の深夜割増賃金として12万6912円(所得税控除前の額)及びそれに対する遅延損害金として8910円を支払っており、これらは本件において原告が主張する深夜割増賃金及びその遅延損害金を上回る金額であるから、深夜割増賃金及びその遅延損害金についても未払は認められない。
 そうすると、原告の被告に対する割増賃金請求及び付加金請求は、その余の争点について判断するまでもなく、いずれも理由がないというべきである。