| ID番号 | : | 09630 |
| 事件名 | : | 未払賃金等請求事件 |
| いわゆる事件名 | : | 未払賃金等請求事件(キャドワークス事件) |
| 争点 | : | 休職期間満了による自然退職の有効性 |
| 事案概要 | : | (1)本件は、被告会社(土木建築に関する企画、調査、測量、設計及び監理、土木建築工事の施工及び請負、物品の販売等を目的とする会社)との間で業務内容を設計及び設計補助とする期間の定めのない労働契約を締結した原告が、被告らに対し、以下の請求をした事案である。 〈1〉令和3年11月19日から休職していた原告が、休職期間満了により令和4年5月19日付けで自然退職とされたため、被告会社に対し、休職期間満了による自然退職は無効であると主張して、労働契約上の地位確認、民法536条2項に基づく賃金及び賞与等の支払 〈2〉被告会社の代表取締役である被告Y3からセクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」という。)及びパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)を受けたと主張して、被告Y3に対しては不法行為に基づく損害賠償請求として、被告会社に対しては会社法350条に基づく損害賠償請求又は債務不履行に基づく損害賠償請求として、連帯して、損害賠償金等の支払(一部請求) (2)判決は、原告の被告会社に対する地位確認請求及び賃金請求はいずれも理由があるとして賃金支払を認容し、原告の被告会社に対する賞与請求は理由がないとして棄却し、被告Y3の不法行為については被告らに対する損害賠償請求の一部を認容した。 |
| 参照法条 | : | 民法536条2項 民法709条 会社法350条 労働契約法8条 労働基準法19条1項 |
| 体系項目 | : | 休職/ 2 休職の終了・満了 労基法の基本原則 (民事)/ 均等待遇/ (11) セクシャル・ハラスメント アカデミック・ハラスメント |
| 裁判年月日 | : | 令和6年4月19日 |
| 裁判所名 | : | 東京地裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和4年(ワ)12814号 |
| 裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
| 出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
| 審級関係 | : | |
| 評釈論文 | : | |
| 判決理由 | : | 〔労基法の基本原則 (民事)/ 均等待遇/ (11) セクシャル・ハラスメント アカデミック・ハラスメント〕 (1)被告Y3の行為が不法行為に該当するか 被告Y3は、原告に対する好意から、原告から拒否されているにもかかわらず交際を申し込み、他の従業員に原告との関係を問い質す等して原告の職場環境を悪化させ、さらに本件展示会でのE及び原告の対応に苛立った挙句、業務の適正な範囲を超えて原告に被告Y3や取引先への不合理な謝罪を命じ、原告に不快感や屈辱感を与えたものであり、こうした被告Y3の一連の行為は、原告の人格権を侵害する違法な行為であり、不法行為に該当するというべきである。 よって、被告Y3は、民法709条に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任を負い、被告Y3の前記一連の行為はその職務に属する行為であるから、被告会社は、会社法350条に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任を負い、両者の関係は不真正連帯債務となる。 (2)原告の適応障害の発症及び損害の発生と被告Y3の不法行為との因果関係の有無 原告は、令和3年10月14日にメンタルクリニックを受診し、適応障害と診断された。そして原告は、被告Y3からの交際の申込みを拒否していた中で、突如不合理な謝罪を命じられたものであって、原告にとっては交際を断った場合の不利益が現実化したものである。この点に加え、被告Y3が被告会社の設計部門を取り仕切る代表者であり、被告会社による適切な対応や改善が期待できないこと等も併せ考えれば、被告Y3の一連の行為によって原告が受けた精神的負荷は大きいというべきである。 よって、被告Y3の一連の行為によって原告が適応障害を発症したものと認められ、被告Y3の不法行為と、原告の適応障害の発症との間には相当因果関係がある。 被告Y3の不法行為の内容や期間、頻度に加え、原告が適応障害を発症したこと、その他本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料額は100万円、弁護士費用はその1割の金額として10万円と認めるのが相当である。 〔休職/ 2 休職の終了・満了〕 (3)本件退職の有効性 被告会社は、原告に対し、令和4年1月15日付けで、労働条件通知書を改正したとして、6か月の休職期間が満了した場合に自然退職となる旨が記載された、原告の労働条件通知書を送付したが、同通知は被告会社から一方的に、しかも原告に休職通知を送付した後に送付したものであって、本件労働契約の内容を変更する効力を有するとは認められない。 被告会社は、休職期間が6か月を超えた場合に、被告会社からの解雇の意思表示なく労働者が退職することは被告会社の運用として定まっており、同様に退職した従業員がいると主張し、同従業員の退職に関する証拠を提出するが、そのような運用が本件労働契約の内容となっていることを認めるに足りる的確な証拠はない。 よって、被告会社の主張する自然退職は無効である。 (4)被告Y3の原告に対する一連の行為は、原告に対する不法行為を構成し、これにより原告は適応障害を発症したことに加え、被告Y3が被告会社の代表者であることや、被告会社の就労環境を併せ考えれば、原告が被告会社に出勤できなくなり労務提供が困難になったことは、被告Y3の一連の行為が原因であると認められる(労働基準法19条1項参照)。 原告は、令和3年10月14日以降、被告会社に出勤していないが、これは被告会社の責めに帰すべき事由によるものであり、本件退職も無効であるから、原告は同日以降の被告会社に対する賃金請求権を失わない(民法536条2項)。 もっとも、原告の労働条件通知書には、賞与に関し、被告会社の業績及び社員の勤務成績によって賞与が減額・不支給となる旨が記載されているにとどまり、賞与の支給条件等は定められていないから、本件労働契約においては、被告会社が賞与の金額を決定して初めて、具体的な賞与請求権が生ずるというべきである。 よって、原告の令和3年10月14日以降の賞与請求は認められない。 |