| ID番号 | : | 09632 |
| 事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
| いわゆる事件名 | : | 東光高岳事件 |
| 争点 | : | 定年後再雇用者の雇止め |
| 事案概要 | : | (1)本件は、A株式会社(以下「A」という。)に定年後再雇用され、期間1年(令和2年10月1日~令和3年9月30日)の有期労働契約(以下「本件契約1」という。)を締結していた原告が、被告(株式会社東光高岳:令和3年10月1日に完全子会社であるAを吸収合併)又はAが本件契約1の次の労働契約として提案した4通りの案(以下「本件提案」という。)にいずれも同意しなかったため、被告は労働契約の更新を拒絶した。そのため、原告は、被告に対し、本件契約1の期間満了時、原告には更新の合理的期待があり、本件契約1と同一の労働条件による原告の更新申込みを被告が拒絶したことは客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないため、本件契約1の内容と同一の労働条件でその後も有期労働契約(以下「本件契約2~4」という。)が成立した、と主張して、被告に対し、〈1〉原告が被告に対し労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求、〈2〉本件契約2~4に基づく令和3年10月分以降の賃金等の支払請求をする事案である。 (2)判決は、原告が被告との間で本件契約1と同じ労働条件で労働契約が締結されると期待することについて、合理的理由があるとは認められないとして、原告の請求を棄却した。 |
| 参照法条 | : | 民法623条 労働契約法19条 |
| 体系項目 | : | 解雇 (民事)/ 14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め) |
| 裁判年月日 | : | 令和6年4月25日 |
| 裁判所名 | : | 東京地裁 |
| 裁判形式 | : | 判決 |
| 事件番号 | : | 令和4年(ワ)6348号 |
| 裁判結果 | : | 棄却 |
| 出典 | : | 労働判例1318号27頁 労働経済判例速報2554号3頁 労働法律旬報2073号63頁 |
| 審級関係 | : | 控訴(令和6年10月17日東京高判:控訴棄却) |
| 評釈論文 | : | 三上安雄・労働経済判例速報 2554号2頁2024年8月20日 丸尾拓養(東京大学労働法研究会)・ジュリスト 1609号126~129頁2025年5月 |
| 判決理由 | : | 〔解雇 (民事)/ 14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕 (1)本件契約1の期間満了の令和3年9月30日の時点において、原告が、本件契約1が更新されると期待したことにつき合理的な理由があるか 本件契約1は、高年法9条1項2号所定の継続雇用制度であるAの継続雇用規程に沿って締結されたものであり、同規程は、Aの就業規則に定める解雇事由等に該当する者を除いて、再雇用を希望する者を65歳まで雇用することを定めているから、原告は、本件契約1の期間満了時、Aの地位を包括承継した被告との間において、労働条件を問わず新たな労働契約が締結されることについては、これを期待することに合理的理由があると認められる。 他方で、本件契約1は、定年後再雇用としては1回目の労働契約であって、本件契約1の期間満了時において有期労働契約の雇用通算期間は1年を経過したところであり、原告とAの間で本件契約1と同じ労働条件で労働契約を更新したことはなかったから、更新の回数や雇用通算期間に基づいて、本件契約1と同一の労働条件で更新されることが期待される状況ではなかった。 また、Aの継続雇用規程では、定年後再雇用者の労働契約は期間1年とされ、労働条件については、再雇用者の希望を聴取した上で諸事情を勘案して個別に会社が契約の都度決定することとなっており、現実にも、定年後再雇用者の労働条件は、上記のとおり運用され、1回目の労働契約の賃金より50%以上低下した条件で次の契約を締結した者もいたのであるから、A継続雇用規程において、1回目の労働契約と同じ労働条件による労働契約締結は保障されていなかったといえる。 本件契約1の期間満了後の原告と被告との労働契約の賃金が、本件契約1の基本賃金月額を下回るものとなることは客観的に避けがたい状況であったといえる。原告自身も、本件更新申込みをするに当たり、Aが被告に吸収合併されるのであれば、ある程度、労働条件を変更する提案がされる可能性があることを認識していた旨述べている。 当時、被告の定年後再雇用者約120名は、被告の定年後再雇用者に適用される労働条件の基準に従い労働契約を締結しており、それ以外の条件で雇用された者はいなかった。 以上からすれば、原告は、本件契約1の期間満了時において、被告との間で本件契約1と同じ労働条件で労働契約が締結されると期待することについて、合理的理由があるとは認められない。以上から、労契法19条1項2号が適用される余地はなく、本件契約1が終了した後、本件契約2~4が成立する余地はないから、原告の請求は、いずれも理由がない。 (2)被告が、本件更新申込みを拒絶したものといえる場合において、当該更新の申込みの拒絶につき、客観的合理的な理由があり、社会通念上相当といえるか 本件各提案は、Aを吸収合併した被告の定年後再雇用者に適用される被告シニア嘱託規程及び被告管理職賃金内規に沿ったものであった。本件各提案がされた令和3年当時、被告に所属していた約120名の定年後再雇用者は、いずれも、本件各提案と同じく被告シニア嘱託規程及び上記内規に沿った労働条件で労働契約を締結しており、これと異なる基準により労働契約を締結した者は一人もいなかった。そして、仮に、Aに所属していた定年後再雇用者が、被告の定年後再雇用者よりも高い労働条件で労働契約を締結し、この情報が漏れた場合には、約120名もの定年後再雇用者において、著しい不公平感を抱き、その士気を損ね、意欲を低下させるおそれがあることは容易に想像できるから、これを回避するため、被告の定年後再雇用者と同一の条件とする必要性は高いといえる。 また、原告以外のAの定年後再雇用者3名が、被告の提案に同意したこと、原告が担当していた業務は、被告が撤退予定の事業に属するものであり、業務が多忙となるというわけではなかったことも、本件提案の合理性を肯定する事実といえる。 これらを考慮すると、本件提案1及び3が、本件契約1に係る労働条件と比較して、勤務日が週4日から週5日に増加する一方、基本賃金は約15%減少するものであり、本件提案2及び4は、賃金額が月額換算で約51%減少するものであり、いずれも賃金の不利益が著しいこと、被告の業績は堅調であり、経費削減の必要性はないことを考慮しても、本件提案には合理性があるといえる。 |