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ID番号 09636
事件名 停職処分無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 学校法人関西大学(高校教諭・停職処分)事件
争点 高校教諭のスキー学舎の引率中の飲酒による停職処分につき無効確認、停職中の賃金・賞与の支払等を求めた事案
事案概要 (1)私立高校Y(被控訴人)の教諭X(控訴人)が、スキー合宿先で生徒を引率中に飲酒をし、飲酒行為を記憶にないとして認めず、校長からの呼出しにも応じなかったこと、保護者との話し合いにおいて自己弁護に終始したことなどを理由としてなされた停職処分(3か月)及び停職中の賃金と賞与の不支給につき、懲戒処分(停職処分)の無効確認と、不支給とされた賃金・賞与の支払い、違法な停職処分による慰謝料の支払いを求めた事案である。
(2)大阪地裁は、飲酒行為は引率教諭として不適切な行為であり、その後の言動は保護者に不信感や疑義を抱かせるものであって、いずれもYにおける職員懲戒規程の懲戒事由に該当し、また、その処分内容も重きに失して相当性を欠くとは認められず、処分に至る手続が違法であるとも認められないとして、Xの請求をすべて棄却した。これを不服としてXが控訴した。
(3)大阪高裁判決は、懲戒処分は重きに失し相当性を欠くとして、懲戒処分の無効と不支給となった賃金、賞与の支払いを認容し、慰謝料の請求は棄却した。
参照法条 民法709条
労働契約法15条
体系項目 懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/勤務中の飲酒行為
裁判年月日 平成20年11月14日
裁判所名 大阪高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成20年(ネ)23号
裁判結果 一部認容(原判決一部変更)、一部棄却
出典 労働判例987号79頁
審級関係 上告・上告受理申立 (平21.3.13 最決:上告棄却、上告受理申立て不受理)
評釈論文  
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/勤務中の飲酒行為〕
(1)Xが、本件飲酒をしたことは、高校教諭として不適切なものであり、「職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき」(職員懲戒規程3条3号)に該当し、保護者らから教諭としての姿勢を問題視されたものであり、「本学の信用を傷つけ又は名誉を汚したとき」(同条1号)に該当する。
 そして、Xが、5月18日の保護者ら代表者との話合いにおいて、40分間にもわたり、本件飲酒が不適切であることを理解することなく、本件飲酒に対する保護者の心情を配慮することなく、本件飲酒の事実について、飲んだかもしれないし、飲まなかったかもしれないなどと話し、少なくとも当初は本件飲酒を正当化し、また、本件飲酒に関して謝罪を求める保護者らの姿勢を批判するような話をしたことは、Yの職員として不適切な対応であり、この話を聞いた保護者らが、このようなXの発言内容や表現方法及びこれに関する学校側の対応について強い不信感を示し、その後、教育後援会の役員らが、学校側に書面を提出し、他の保護者らに書面を配布するなどして、問題の改善を要求するまでに至ったことは、「本学の信用を傷つけ又は名誉を汚したとき」(同条1号)に該当するといわなければならない。
 そして、Xは、本件飲酒について、8月4日に提出した弁明書に、飲酒したとの判断を受け入れると記載し、同日の理事会小委員会で、当時の状況及び他の教諭の話の内容に照らして、飲んだと言われれば反論できないなどと述べるまでの間、明確には本件飲酒をしたことを認めようとせず、また、Xの本件飲酒に関する言動が保護者らの不信感を招く要因になったことについては認めず、保護者らが期待するような謝罪と反省の意を示さなかったというべきである。
 よって、Xには、懲戒処分書記載の懲戒事由に該当する行為の存在が認められるというべきである。
(2)Xの懲戒事由のうち、本件飲酒については、Xの飲酒量は少量であり、飲酒がされた状況も必ずしも緊急事態中というものではなく、実際に業務に支障を来したわけでもないこと、5月18日の話合いにおける発言等についても、Xが保護者らの心情を配慮せず、保護者らがXに不信感を抱いたことはやむを得なかったとはいえ、Xは故意に本件飲酒を否定したものではないし、その場でも、全面的にとは評しにくいものの、一定の謝罪と反省の意を表していたこと、Yにおいては、本件飲酒に関して教育後援会に対し、当初は、校長が対処すべき事柄であるとして、直接本件飲酒に関わった教諭を詰問することを断っていたのが、教育後援会から学校側の姿勢を問題視されると、謝罪する場として教諭を直接保護者らに対面させる話合いを設け、Xに対しては、あらかじめ業務命令としてこの話合いへの出席を指示しながら、その場の発言内容について保護者らに謝罪することを指示、助言しないばかりか、逆に自由に発言するように助言したため、控訴人による不適切な応対を誘発したという側面もあること、5月18日の話合いの場では、その場の雰囲気で激高した保護者らもあり、せっかく終盤に謝罪したXの意向もかすんでしまった中で、Y側の応対もばらばらであり、保護者らの気持ちに応えたり、あるいはその激した気持ちを鎮めたりするために何ら有効な応対もできず、一人Xに非難を集中させるに任せたことも否定できないこと、5月18日の話合いにおいて、保護者らは、全体的には一応常識的な雰囲気が保たれた範囲内にあったといい得るし、また、Xの不適切な対応に不信感を抱いたこと自体はもっともであるといえるものの、一部の冷静さを欠いた発言に引きずられたのか、多少感情的になる傾向がなかったわけではなく、その傾向は、その話合いの後に、典型的には教育後援会の役員らが高校保護者に宛てた書面で、前記のとおり一定の謝罪と反省の意を示したXに「反省の気配もない」と決めつけるほどとまでなって、やや公平に欠けると言われても仕方がない程度に至っており、教育後援会の役員らの反応とそれに触発された教育後援会の対応からはある程度割り引いて評価すべき要素もないわけではないこと、同じく本件飲酒をしたB教諭及びD教諭に対しては、同人らが本件飲酒が問題にされた後、本件飲酒の事実を認め、校長から厳重注意を受けて反省の意を示し、保護者ら代表者との話合いにおいて、最初から本件飲酒について謝罪と反省の意を示しているとはいえ、譴責処分がされたに止まっていることなどの事実が認められる。
 さらに、Xは、従来教師として特に問題視されることもなかったこと、本件停職処分を除いて懲戒処分を受けたことを示す証拠が全くないこと、懲戒委員会においてもXを停職処分にするとの決議には至らなかったことに、Yにおける飲酒に対する対応及びYの職員の懲戒処分例をも総合して考慮すれば、Xに対する懲戒処分として、上記両教諭より重い処分が選択されることはやむを得ないとしても、たかだか減給程度の処分が相当であると認められ、仮に停職処分に付する余地があるとしてもごく短期間のもので十二分であると考えられ、いずれにしても、本件停職処分は、懲戒処分として、著しく重きに失し、相当性を欠くものであり、裁量権を著しく逸脱したものであるといわざるを得ない。
(3)本件停職処分は重きに失し相当性を欠くものではあるものの、もともとXの行為は十分に懲戒事由に該当するというべきであって、また本件停職処分があえてXを貶めることを目的としたものであるとまで認めることはできず、適正な手続を経ていないともいえないから、本件停職処分はそれが取り消された上でさらになおXの慰謝料請求を認容するに足りる程度にまで違法であったとは認められないというべきである。