ID番号 | : | 10005 |
事件名 | : | 労働基準法違反被告控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 御国ハイヤー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働者が賃金の現金払を希望しているのに対して口座払いを取り続けたことが労基法二四条に違反するとして起訴された事案の控訴審。 |
参照法条 | : | 労働基準法24条1項 労働基準法120条1号 |
体系項目 | : | 賃金(刑事) / 賃金の支払い方法 / 直接払い・口座払い |
裁判年月日 | : | 1981年9月22日 |
裁判所名 | : | 高松高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (う) 123 |
裁判結果 | : | 無罪 |
出典 | : | 労経速報1115号15頁/労働判例379号62頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金の支払い方法-直接払い・口座払い〕 労基法二四条一項は、労働者に支払われる賃金が中間搾取されることがないよう完全かつ確実に労働者の手に渡ることを期して、通貨で直接支払うべきことを命じたものであると解され、賃金の口座振込みによる支払が同項に違反するか否かはかねてから問題とされていたが、所論も指摘するとおり、昭和五〇年二月二五日労働省労働基準局長の基本通達があり、これに基づく行政指導が行われ実務に大きく影響を及ぼしていたと思料される。 (中略) ところで、労働者に対する賃金支払方法につき賃金を保護した労基法二四条一項の趣旨よりみて、前記基本通達における、賃金支払を口座払にするに必要な労働者の意思とは、労働者各人の自由な意思の趣意と解される。口座払の方法が通貨払と同一視できるほど便利なものであるかどうかはもっぱら個々の労働者の主観的事情によるとは、原判決の既に指摘するところであるが、その主観的事情は人によって異り得るのであるから、賃金保護の趣旨よりみて、先づ労働者各人の自由な意思が尊重されるべきことは多言を要しない。本件においても口座払の方法によることの合意は、各労働者と被告人ら会社側との間で個々的になされたものであり、したがって右支払方法の継続を希望しない労働者の合意の解除は、同様個々的に会社側との間になされなければならない。各労働者の個々的な口座等指定取消の通知なり、同意取消の通知なり、合意の解除申込なり、という性質を示すものが会社側に対しなされなければならない。その際においても保護さるべきは各労働者の賃金であり、重視さるべきは労働者個々の意思であり、たとえば、かりそめにもこれを組合がその斗争手段等として悪用したり組合の便宜のため左右したりしてはならないし、会社側としても、本人よりのものであると認められるものがあればそれが取消権の濫用等でない限り、誠実に対処し各労働者の意思を尊重すべきであると考える。 |