全 情 報

ID番号 10014
事件名
いわゆる事件名 金甲山観光産業事件
争点
事案概要  会社代表取締役の就業規則届出義務違反、取締役支配人の休日付与義務違反につき、右代表取締役および事業主が労基法違反の罪に問われた事例。
参照法条 労働基準法10条
労働基準法35条
労働基準法89条1項
体系項目 労基法総則(刑事) / 使用者
休日(刑事) / 休日の付与
裁判年月日 1975年3月27日
裁判所名 広島高岡山支
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (う) 120 
裁判結果 無罪(確定)
出典 刑裁月報7巻3号170頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休日-休日の付与〕
 労働基準法三五条によれば、休日は毎週少なくとも一回与えるのが原則であるが、四週間を通じ四日以上与えるという方法によることも許されているところ、被告会社の就業規則二四条一項(一七六丁裏)も同ようの定めをしているのであって、これらによれば、各労働者ごとに四週間を通じて四日以上の休日を与えなかった場合に休日付与義務違反の一罪が成立すると解するのが相当である。従って、各月ごとの前記訴因の記載、およびこれをそのまま認定した原判決の事実認定・罪数の解釈は適切ではなく、「昭和四四年二月二日(第一週の初日の日曜日)より三月一日(第四週の末日の土曜日)まで」(以下これに準ず)「同年三月二日より同月二九日まで」「同月三〇日より、四月二六日まで」というように是正されるべく、かつ、それぞれが一罪であると解釈されるべきものである。
〔労基法総則-使用者〕
 労働基準法八九条によれば、常時一〇人以上の労働者を使用する使用者は、所定の事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならないとされているところ、ここにいうところの使用者とは、同法一〇条により「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」をいうのである。これを本件の就業規則の作成・届出に即してみると、右使用者とは特定の事業場に適用されるべき就業規則を立案して作成し、届出に必要な労働組合等の意見を聴取し、しかるのち行政官庁に届け出ることについての実質的な権限の全部又は一部を、事業主から包括的に与えられており、そのために右の点に関し事業主に対しなんらかの責任を負う者をいうものと解される。従って、かかる権限と責任を有する者は、その事業場内における職制上の地位・名称のいかんにかかわらず、右の使用者に含まれるのであるが、反面右のような実質的な権限と責任を有しない者は右の使用者には含まれないというべきである。