全 情 報

ID番号 10028
事件名 公務執行妨害被告事件/傷害被告事件
いわゆる事件名 長岡電報電話局事件
争点
事案概要  昭和三六年の春闘にあたり行なわれた全電通長岡電報電話局および三条局のストライキに関連して、三条電報電話局において、同局次長が局長の指示に従わなかった休暇請求手続違反該当者に注意書を交付していた際、これをやめさせようとして、同人から注意書をとりあげてこれを丸め同人の足もとに投げつけたり、局長室へ赴こうとする同人の襟元を強くつかんで強く押し、胸部を椅子の肘に強圧させ治療約二週間を要する胸部挫傷を負わせた行為が公務執行妨害、傷害罪を構成するか否かが争われた事例。
参照法条 刑法95条
刑法35条
労働基準法39条
体系項目 年休(刑事) / 年休の付与
女性労働者(刑事) / 生理日の休暇・生理休暇
裁判年月日 1971年2月19日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (う) 2080 
裁判結果 一部有罪(懲役4か月,6か月・執行猶予2年)(上告)
出典 時報638号54頁
審級関係 一審/新潟地長岡支/昭42. 8. 7/昭和36年(わ)135号
評釈論文
判決理由 〔年休-年休の付与〕
 原判決は、新規の手続が課長の内諾あるいは承認を要求している点をとらえて、労働基準法違反であるとするけれども、同法第三九条第一ないし第三項の文言とこれが違反を罰する同法第一一九条とを併せ孝えると、右有給休暇請求権は、いわゆる形成権ではなくして、使用者の時季変更権を行使するかどうかを考慮した上での許諾にかかる請求権と見るべきものであり、前記確認者における課長の許否、「職員各位」中における「承認」もまた右意味において理解するのが相当であって、この点においても新規の手続には、従来の手続を労働者の不利益に変更した点も労働基準法に違反した違法も認められない。したがって、新規の手続をもって従来の手続を労働者の不利益に変更した違法なものであるとする原判決の判断には、事実を誤認したか法令の解釈を誤った違法があるものといわねばならない。
〔女性労働者-生理日の休暇・生理休暇〕
 ところで、生休の請求に関して公社側が一方的に決めた新規の手続の定めによれば、「生理休暇については、生理のため就業が著しく困難であって生休を受けたい者は特別休暇願に記入、押印の上所属課長に提出してその承諾を得ること」とされており、右の定めは、組合側の同意を得ないで、生休請求の要件を従前の手続より明らかに労働者の不利益に変更したものと認められるから、この点において、前記諒解に違反する不当なものといわなければならないのみならず、労働基準法第六七条は、生理日の就業が著しく困難な女子または生理に有害な業務に従事する女子が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならない旨規定し、女子年少者労働基準規則第一一条第一項は、右の生理に有害な業務の範囲を明示しているので、同条項の掲げる生理に有害な業務に従事する女子が生休を請求したときは、生理日の就業が著しく困難である場合ではなくても、生休を与えなければならないものといわねばならない。