全 情 報

ID番号 10041
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 藤野金属工業事件
争点
事案概要  技能資格検定試験費用を使用者負担とするとともに合否決定の日から一年以内に退職する場合は右費用を返済する旨の誓約書が労働契約の不履行につき損害賠償額を予定する契約をしたものとして使用者が起訴された事例。
参照法条 労働基準法16条
体系項目 労働契約(刑事) / 賠償予定の禁止
裁判年月日 1968年2月28日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ら) 1305 
裁判結果 無罪
出典 労経速報637・638合併号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-賠償予定の禁止〕
 労働基準法第一六条にいわゆる違約金とは、広く契約不履行に対する制裁として違反者が相手方に支払う金員を指称し、労働契約においては、主として契約期間の途中で転職、逃亡などした労働者やその親元などに課せられるものであり、損害賠償額の予定とは、契約違反、不法行為の場合にその相手方ないし被害者が蒙る損害をあらかじめ一定して置き契約違反ないし不法行為の起ったときに、一々損害額を計算し証明する労を省くためのものであるが、同条において労働契約の不履行につき、これらの違約金又は損害賠償額を予定する契約を締結することを禁止するゆえんのものは、使用者が労働者に対して雇用関係の継続を不当に強要するおそれがあるからであるところ、労働関係において、使用者が被用者の願出により技量資格検定試験受験のために社内技能者訓練を実施し、使用者において、材料費を含む練習費用、部外講師並びに部内熟練工による指導費、及び検定試験に要する費用などを支弁し、その計算の範囲内において金額を定め、合格又は不合格の決定後、約定の期間内に退職するときは、右の金員を使用者に返済し、約定の期間就労するときはこれを免除し、なお所定の報賞金を追加支給する旨の特約をすることは、その費用の計算が合理的な実績であって使用者側の立替金と解され、かつ、短期間の就労であって、全体としてみて労働者に対し雇よう関係の継続を不当に強要するおそれがないと認められるときは、労働基準法第一六条の定める違約金又は損害賠償額の予定とはいえないと解する。